10月27日に行われた衆院選・千葉4区(船橋市・市川市)。

千葉県船橋市は長年、立憲民主党・野田佳彦代表の牙城だったが、今回の区割り変更で船橋市は4区と新設の14区に分かれることになった。

野田氏は新設の14区からの立候補を決め、野田氏の地盤そのものである4区を任されたのが立憲民主党の新人・水沼秀幸氏だ。

自他共に認める野田氏の“一番弟子”として初めて選挙に出た水沼氏は、自民党の元職らに勝利、初当選を果たした。その背景には、野田氏との強い師弟愛があった。

〈勝利をおさめた水沼氏、10月27日〉

「政治家は悪いやつしかいない」“生意気な小学生”水沼氏が野田氏の“一番弟子”になるまで

およそ20年前、船橋市の小学6年生だった1人の少年が、国会見学に訪れた。「政治家は悪いやつしかいない」。そう思っていた少年は、国会議員に意地悪な質問をして困らせてやろうと、次々と質問をした。その少年の対応をしたのが、まだ中堅議員だった野田佳彦氏だった。

野田氏は、その時をこう振り返る。

野田代表(立憲民主党の機関紙より)
「面と向かって『政治家は悪い奴ばかりだ』と言う人は中々いないですからね。でもそのおかげでスイッチが入り、この小学生を何としても抑えないといけないと、質問に対して丁寧に分かりやすく、そして面白く説明することができました」

野田氏は「生意気な小僧だ」と思いつつ、少年の目を真っすぐに見て、丁寧に自らの考えを述べたという。この野田氏の誠実な言葉と姿勢に、「政治家は悪いやつしかいない」と思っていた少年は「いつか自分もこんな政治家になりたい」と思うようになっていった。

この少年が水沼氏だ。

〈野田氏と並ぶ20歳の水沼氏、前列一番左〉

それ以来、野田氏の背中を追い始めた水沼氏は、野田氏と同じ早稲田大学に入学。大学4年間は、野田氏の事務所でインターンを続け、社会人になっても有休を取り野田氏の政治活動を手伝い続けた。

転機は2023年5月。野田氏が衆議院小選挙区の区割り変更で新設された千葉14区(千葉県船橋市東部と習志野市)から立候補し、これまで戦ってきた千葉4区の地盤を水沼氏に譲ることを決めたのである。野田氏はその時の決断をこう振り返る。

立憲民主党・野田代表
「12歳の頃から、私の政治信条を真摯に学び続けてきた若者は、水沼さん以外にいません。秘蔵っ子です。20年間私の後ろ姿を追いかけてきてくれた、分身のような存在です。私は世襲には反対ですが、自分の志は次世代に引き継ぎたいと願っていました」

こうして、“野田佳彦の一番弟子”の戦いが始まった。

「野田佳彦の一番弟子」の戦いは

まず水沼氏は「挑戦者」のたすきをかけ、朝と夕方、駅に立ち、市民の“声を聞くこと”に重きをおいて活動をはじめた。師匠の野田氏も、毎朝の駅頭活動を政治活動の原点と位置付けている。水沼氏も野田氏の背中を追い、およそ30か所の駅を順番に回った。

そして、“一番弟子”、“後継者”、“秘蔵っ子”として、あらゆる集会に野田氏に連れられ顔を出し、知名度を高めていった。

その姿は、他陣営から「水沼氏の『挑戦者』のたすきは、他の候補に対しての挑戦ではなく『野田氏の実績への挑戦』という意味なのではないか」と言われるほどだったという。

〈駅前でチラシを配るなど活動をする野田佳彦代表と水沼候補〉

代表からの熱い応援演説

衆議院が解散され、衆院選モードとなった10月12日、立憲民主党の代表となった野田氏は、合間を縫って水沼氏の応援へと駆けつけた。

野田佳彦立憲民主党代表
「私の演説を一番聞いて育った若者が水沼秀幸さんだと思っています」
「私のように『地盤』『看板』『カバン』はないけれども野田の志を引き継いでこの千葉4区で分身として活動してくれるのは彼しかいない」

水沼氏も、言葉に力が入る。

水沼秀幸候補
「12歳の時に野田元総理に出会い、この人みたいに世のため人のために役に立ちたいと志を22年間持ち、そしてこの決戦の場にたどり着くことができました。だから今度は私が恩返しをさせていただきたいのです」

熱い握手を交わし、勝利を誓った。

〈応援演説で握手を交わす野田代表と水沼候補、10月12日船橋駅〉

走り続けた12日間。
JNNの出口調査では、新人らしからぬ終始安定した戦いを見せ、開票結果でも自民・木村候補らに大差をつけて勝利を収めた。

水沼秀幸候補
「皆様からの『若い力で古い政治を終わらせろ。政治改革を成し遂げろ』という力強いメッセージであると認識しています。勘違いせず、調子に乗らず、今の環境が当たり前だとは決して思わず、愚直に誠実に、野田代表と共に、世のため人のために、すぐに仕事を始めます。ここからがスタート」

勝利を収めた翌朝も、駅前に立つ水沼氏の姿があった。

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