山陰各地で広がるイノシシやクマなどの鳥獣による農作物への被害。
島根県では、2015年から鳥獣専門職員を採用し、その対策に乗り出しています。
最前線で活躍する鳥獣専門職員が担う役目とは?
畑にやってきたイノシシの映像。
電気柵に触れ、驚いて逃げていく様子が映されています。
一方、こちらのイノシシは、電気柵には触れず、そのまま後ずさりして、逃げていきます。
「柵の内側で、とても美味しい思いをしていると『またきょうなら大丈夫かもしれない』と何度もやって来るが、いったん(柵に)触れた後は、柵にあまり近づきたくないっていう」
そう説明してくれたのは、島根県東部農林水産振興センターの鳥獣専門調査・指導員、杉原瑞菜さんです。
全国的に鳥獣被害が相次ぐ中、島根県では、野生動物の生態などの専門的知識を持つ鳥獣専門職員を採用。
現在16人を県内各地に配置し、対策に取り組んでいます。
島根県東部農林水産振興センター雲南事務所 鳥獣専門調査・指導員 杉原瑞菜さん
「誰に相談すればいいのかっていうのが分からないよりは、身近に聞ける人がいるとか、何かあっても一緒にやってくれる人がいるのは、地域の方にも心強い面があるのではないかと思う」
島根県の有害鳥獣被害は1998年には、2億7600万円にのぼりましたが、その後、鳥獣専門職員の採用など様々な対策を取り、現在は、7000万円程度となっています。
しかし、減少傾向にはありません。
中でも、もっとも被害が大きいのはイノシシで、全体の80%。
その被害の大半は水稲で、踏み入った田んぼの稲は倒され、穂も食べられてなくなってしまいます。
鳥獣専門職員の杉原さんは、島根県に採用される前は、電気柵に関わる仕事に携わっていました。
電気柵設置のポイントを聞くと。
島根県東部農林水産振興センター雲南事務所 鳥獣専門調査・指導員 杉原瑞菜さん
「イノシシの場合だと、地面から20センチと20センチの2段張り。
よくあるのが、『低いからもうちょっと高くないと』と言われて、1段目の高さを30センチ間隔にされる方もいるが、そうすると、イノシシの目線よりも高くなってしまうので、線に触れずにそのまま、畑の中に入っていってしまう」
一方で、イノシシは、傾斜に蹄をかけ、登る能力もあるとのこと。
島根県東部農林水産振興センター雲南事務所 鳥獣専門調査・指導員 杉原瑞菜さん
「圃場があれば、ちゃんと、全て囲っていただきたい。一辺でも隙間があると、それをたどって入っていったりというのがあるので、コの字ではなく、いつもロの字になるようにと言っている」
次に、クマの対策現場を見せてもらいました。
カキの木の下から2メートルほどトタンが巻いてあります。
「朝とかに、枝が折れてたりとか、木に爪痕があったということで、『この木にもクマが来てる』ということで」
写真には、カキの木につけられたクマの爪痕。
するどい爪痕が残っています。
そこにトタンを巻くと仮にクマが来たとしても、爪が立たず登れなくなります。
その他、実を木に残さず収穫する、必要なくなった木は、切り倒してしまうことも対策のひとつということです。
こうしたひとつひとつの小さな対策を地域と行政が連携して進めることが、被害防止には必要となります。
島根県東部農林水産振興センター雲南事務所 鳥獣専門調査・指導員 杉原瑞菜さん
「どこでも、みんなが同じようにきちんと柵を張れたり、対策が出来ていれば、その集落ではあまり、動物が美味しい思いができないので、近づきにくくなる。あとは、やっただけで終わりじゃなくて、『この対策はどうだったか』というのを振り返ることで、さらにみんなで共通の意識を持っていく」
島根県の鳥獣専門職員は、被害削減に向け、大きな役割を担っています。
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