沖縄本島北部の洞窟で、推定7000年前の全身骨格と、頭骨がしっかり残った古代人の人骨群が発掘され、注目を集めています。
この洞窟のさらに深い地点の調査がこのほど行われ、専門家も首をかしげる謎の人骨が新たに見つかりました。RBCの独占密着取材です。
(前回の記事はこちら:「沖縄の洞窟で見つかる古代人の頭蓋骨・手足の骨・・・ なぜ朽ちずに残るのか」)
洞窟でこれまでに見つかっているのは、鍾乳石に覆われたままの7000年前の人類の全身骨格と、頭骨を含む無数の骨。
洞窟の調査は始まったばかりで、いまだ、その全容は謎に包まれています。
▽吾津洋二郎記者
「再びあの洞窟にやってきました。その後の調査で、奥深くから、またよくわからない人骨が出たというのです。詳しい調査に同行できるということでこれから行ってみたいと思います」
▽考古学者・山崎真治氏
「今回の第3地点はとても険しい場所を降りたりしないといけないような、洞窟の一番奥の場所、人骨がかなりまとまってあるということなので、恐らく人の手によってそこまで運ばれた可能性が高いと思っている」
取材班は、考古学者・山崎真治を中心とした調査チームとともに洞窟に入り、新たに人骨が見つかったという第3地点を目指します。
鍾乳石に覆われた全身骨格があった第1地点や、無数の骨がみつかった第2地点とはまた別の方向、洞窟のさらに深くへと進んでいきます。
斜めに割けた岩盤。人がひとり通れるほどの隙間を、ロープを頼りに、ゆっくりと下りていきます。
そして、調査チームは洞窟の最深部・第3地点に到達。そこには、見たことのない光景が広がっていました。
▽考古学者・山崎真治氏
「ここが未知の場所。あまり探検していない場所なので、少し追加の情報が得られるといいなと思っています」
「宝探し。みんなの目で何か「あっ」というものがあったら教えて」
「そんなところに、あっ本当だ!ホントだ!ホントだ!それはいいですね」
「さすがですね。いっぱいあるじゃないですか。いっぱいあるじゃないですか」
詳しい調査を実施した結果、人骨と、土器の破片がいくつも見つかりました。
さらに、ここで特異な状況の人骨がー
▽考古学者・山崎真治氏
「この穴の中に寝ている人がいます」
小さな横穴のような場所、人ひとりが通れるような先に小部屋のような空間がありました。そこに、1体分の人骨が横たわっていたのです。
「不思議ですよね、この空間ですら結構奥なのに、そこのさらに狭い部屋の中に入っている」
横たわる人骨を前に、専門家たちのやり取りが続きますー
▽玉泉洞の洞くつ担当 大岡素平さん
「(遺体を)置いたあとに(上部の岩盤が)崩れた?」
▽考古学者・山崎真治氏
「そうなんでしょうか…」「もうちょっと(穴の入口が)広かった?」
▽玉泉洞の洞くつ担当 大岡素平さん
「もうちょっと広かったかも」
▽考古学者・山崎真治氏
「そう考えた方がいいですよね」「だけどこっちから崩れて埋まったんだとしたら、人骨もちょっとくらい埋まりそうですよね」
「あまり埋まっていないですよね。引っかかって止まっているのかもしれないけど…」
非常に狭い空間に古代人骨が横たわることになった状況に、推理をめぐらせます。
▽コウモリ専門家 田村常雄さん
「(遺体を)連れてきたときにここがどういう状況だったのか。“礫(れき)”だったんですかね。それとも、もうちょっと空間が大きかったのか」
▽考古学者・山崎真治氏
「ほとんど(当時と)違いはないでしょ、不思議ですよね」
おそらく裸足だったであろう当時の人々は、この険しい道のりのなか、どのようにして遺体を運んだのでしょうか。
なぜ、洞窟の奥深くのさらに小部屋のような場所に遺体を置いたのでしょうか。
新たな発見により、この洞窟の謎は、より深まっています。
▽考古学者・山崎真治氏
「今まで僕らはこんなもの見たことなかった。ここが初めての事例だと思うんだけど」
「死者が出たらここの洞窟に持ってくるという場所だったんでしょうか」
ー数千年前の人が?
「うん。ということじゃないですかね。今の現状の知見からみると」
新発見が相次ぐ謎の洞窟。この人骨が、私たちの祖先なのかもしれません。
<取材MEMO>
沖縄には、旧石器時代と貝塚時代の間に「歴史の空白期」があります。今回の人骨はこの空白を埋めるような考古学の貴重な発見となるかもしれません。今後の調査が楽しみです。(取材 吾津洋二郎)
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