裏金問題で揺れた衆院選の影で、若者たちが食費や学費の値上がりに苦心しています。中には1日1食で過ごしていた学生も。彼らは政治にどんな期待を持つのでしょうか。投票日を前に、争点の現場を訪ねました。
「教育無償化を本当にやってくれるのか…」困窮する大学生が政治に望むこと
東京大学・農学部3年の八十島士希(やそじま・しき)さん(25)。都内にある家賃5万8000円のアパートでひとり暮らしをしている。
山本恵里伽キャスター
「物がたくさんありますね」
東京大学・農学部3年 八十島士希さん
「研究室とかで廃棄予定の棚とかくれる。グレーの箱も大学でもらったものです。基本的には洋服入れてて。たんすとかって結構高いし」
実家には経済的な余裕がなく、貸与型の奨学金月12万円とアルバイト代で学費と生活費をまかなうというのが大学進学の条件だった。ところが、授業とアルバイトの両立に苦労して留年してしまい、今は学業を優先している。
親から生活費を前借りし、まとまったバイト代が入れば返済するという生活で、この日の所持金は1566円だった。
山本キャスター
「食事とかってどうしているんですか?」
八十島さん
「生野菜とか腐らせちゃうんで、どっちかっていうと冷凍食品とかを使ってますね。東京はどうしても家賃が高いし、食費も最近値上がりしている。生活状況は自分の主観で言うと、かなり苦しい」
さらに今、生活に苦しむ学生たちに追い打ちをかける動きが。物価の高騰や国の補助金の減額などの影響で、大学の授業料値上げが相次いでいる。
東京大学も9月、来年度の新入生から授業料を10万円以上値上げすると発表した。
学生「学費上げるなー!学生の声を聞けー!」
値上げに反対する学生たちの中には、八十島さんの姿もあった。
八十島さん
「この先、大学に行きたくても行けない学生、今もたくさんいると思うが、さらに増えていくことによってどんどん格差が固定化されていくのが非常に恐ろしい」
八十島さんは、10月27日の投票には必ず行くと話す。
山本キャスター
「政府に求めることって何かありますか?」
八十島さん
「まずは高等教育無償化。各党の公約を見ていると、教育無償化という言葉はいろんなところから出てはいるんですけど、それを書いている政党が本当にそれをやってくれるのかというところで判断しないといけない」
1日1食か2食 家族にも頼れず貧困にあえぐ若者たち
NPO法人が運営するシェアハウス。家族にも頼れない若者たちが身を寄せ合っている。親の精神疾患や虐待など、入居の背景は様々だ。
風呂とトイレは共同。ひとり4畳ほどの個室で、家賃は光熱費込みで4万5000円。全国からの入居希望者が絶えないという。
NPO法人「サンカクシャ」 寺中湧飛さん
「(1か月に)10〜15人ぐらいは『家がなくなりました』『住ませてください』というような連絡が来る。ネットカフェにずっと泊まっていたけど、お金も払えなくなって(ここに)繋がるみたいなケースの子も多いので」
18歳の学生・Aさんも、半年前にここに行きついたひとりだ。
専門学生 Aさん
「いろいろなところを転々として、やっぱり親との関係性がないと自分で家を借りることができないので、こういうところに頼らざるを得なくて」
映像クリエイターになる夢を叶えるため専門学校に通い、CGを使ったイラストを学んでいる。
学費はほぼ全額が免除されている。給付型の奨学金を月7万5800円を受け取っているが、家賃と専門学校までの交通費を支払うと、配達のアルバイトをしても、残ったお金では食事もままならないという。
Aさん
「まず食うご飯がないというところが、もうここずっとなので。時間が来たからご飯っていうより節約のために腹が減ってないならもう食わない。コンビニの弁当もすごい高くなっていて、弁当が今、贅沢品というか、カップラーメンもちょっときついぐらいなので」
食事は1日1食か2食。この日も、昼にインスタントラーメンを食べたので、寝るまでもう食事はとらないという。
所持金を見せてもらうと…
Aさん
「500円くらいじゃないですか。口座が1100円ぐらいですかね」
Aさんは今、政治に何を望むのか。
Aさん
「高齢者の方々の支援とかも大事ですけど、若者とかそこら辺をいろいろしてくれるところ(候補者)がいいなとか思いつつ。今の生活もままなってないので、いきなり就職できるか不安もありますし、就職できた後もちゃんとやっていけるかなって不安もありますし。夢はあるんですけど、うまくいくかなという感じです」
「年金だけでは暮らしていけない」働き続ける年金生活者が政治に望むこと
物価高で厳しい経済状況は、年金暮らしの人たちにも直撃している。
名古屋市に住む松江譲さん(78)は、5年前から生活のためにある仕事を始めた。
──今日はどういう作業を?
松江譲さん
「草取りと、落ち葉の溜まったところを取る」
シルバー人材センターから委託を受けて、一般家庭などの清掃業務を行っている。
松江さん
「草の種類によってさ、大変なんだ。このツルが厄介」
──夏は大変だったのでは?
「暑かった暑かった。もうべっとべとになってやっとって」
──腰は大丈夫ですか?
「腰はもう万年で。だましだまし湿布貼って。湿布貼ってる、もちろん。コルセットはめてやってる」
松江さんは15歳の時、集団就職で長崎から名古屋へ出てきた。それから58年間、木工所に勤めたが、72歳の時に会社が倒産して退職した。
夫婦で年金を受け取っているが、保険料などが引かれ、使える額は月18万円ほど。それだけでは生活がままならないため、働きに出ることにしたという。
松江さん
「年金は少ないし、引かれるものも多いし、介護保険やら保険料も高いもんね」
「旅行も行ったことないし。旅行行けるような(年金が)あったらいいかな」
仕事は1日3時間の日もあれば、フルタイムの日もある。時給は愛知県の最低賃金1027円で、9月は3万7382円を受け取った。
食費の高騰も家計を圧迫している。
妻 松江洋美さん(78)
「買う物を減らして減らして。前は関係なしに欲しいもの買ってたけど、今は選んで選んで」
「趣味はお花をやってた時もあるし、絵手紙とかもやってたけど、みんなやめました。田舎が遠いから何か起こった時のために、そのお金はなるべく使わないように…」
唯一、自由に使えるというお金を見せてくれた。時給の1027円から、220円を小遣い分として貯めているという。
政治について望むことを聞くと…
松江譲さん
「物価を下げるような政策をしてほしいし。消費税だわね、一番ネックになってるのは」
妻 洋美さん
「軍事費を減らして、全部国民の方に回してほしいと思ってます。結局(日本の)軍事産業やってるとこだけはすごい成長してるから」
年金が少なく、経済的な理由で仕事を続ける高齢者は他にもいる。
福祉施設で働く男性(70)
「3回ぐらい会社が倒産して、次の仕事が決まるまでの間は、年金のお金もなかなか払えない」
──今もらってる年金だけだと生活は厳しい?
福祉施設で働く男性(70)
「無理無理無理無理。(年金は)月に計算すると9万(円)ぐらいしかないからさ」
──年金だけでの生活はやっぱ厳しい?
建設業の男性(77)
「厳しいですよ。選挙に出ている人は自分勝手というか、自分の立場で物事を決めるからね、私らの事を考えて物事を決めるならいいけどね」
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