もし自分のマチにクマが現れたら…日頃からみんなで対策を話し合う、ある村の取り組みです。

無線「クマ目視できた」

北海道上川地方の占冠村。道の駅のすぐ裏手に、もしクマが現れたら…手加減なしの、リアルな訓練です。

無線「確認ですが、現在も発砲不可の状況?」

無線「そう。クマスプレーを持って」

指揮を執るのは、占冠村の職員です。ここにクマ対策のヒントがあります。

視聴者提供の映像
「(クマが道路を走るようす)危ね!おいおいおい!」

全国的な課題となった、クマとの距離。

(札幌 南区 2019年放送)
「住宅地にクマが現れました。住宅地の中をクマが歩いています」

現在の鳥獣保護管理法では、夜間や住宅地での発砲が禁じられています。

そのため、クマが連日現れても発砲できず、2か月も被害が長期化したケースもありました。

 7月、環境省の専門家検討会は、人身被害のおそれがあるときなどに一定の条件のもと、住宅地でも銃を使えるよう緩和する方針をまとめました。

法律が変わったとしても、求められるのは現場の判断です。

酪農学園大学 環境共生学類 佐藤喜和教授
「地域住民の安全を確保して、事故のない捕獲ができなくてはいけない。判断を誰がするのかなど、まだ課題は多い。事前の協議をしたほうが、クマが出没したとき、スムーズな協議と判断ができるのでは」

 占冠村は、役場の職員として、「野生鳥獣専門員」を設けています。

日頃から地域のクマの調査・分析を重ね、住民と情報を共有することを大切にしてきました。

占冠村 野生鳥獣専門員 浦田剛さん
「クマへの対応は、捕獲だけではない。日ごろからの被害防止のための活動でなどに、みんなで取り組む必要がある」

 6月に行ったクマ対応訓練には、役場職員や警察、振興局、近隣市町村、消防やハンターなど50人ほどが集まりました。

浦田さんは、ひとりひとりの紹介から始めました。

富良野警察署 地域課 長崎俊之課長
「顔が見える関係を作って、個々の連携に生かしたい」

 意気込みを話すことで、それぞれが参加する意味を自然と自覚していきます。

占冠村 野生鳥獣専門員 浦田剛さん
「せっかくその場にいる人たちが、いることに重みがつく扱いをしなくてはいけない」

全員が責任感を持って臨む訓練は、緊張感が高まります。住民も、見つめます。

訓練に参加した住民は…
「どういうプロセスで駆除しているか、疑問を感じたので参加しました」

 占冠村 野生鳥獣専門員 浦田剛さん
「少し車を前に出してください」

ハンターでもある浦田さんが、人や車の配置を指示。

協力して、クマが住宅地に近づかないよう、少しずつ追いやっていきます。

生い茂る草に、身を隠すクマ。

無線「(クマが)河川を越えようとしているので注意を」

 川を越え、山に向かったようです。

無線「(クマが)スキー場の下に入った。気をつけて!」

ときにはハンターに突然迫るなど、リアルな動きを見せたクマ役は専門家が務めていました。

 酪農学園大学 環境共生学類 伊藤哲治講師
「野生鳥獣専門員がいるので、連携やふだんのコミュニケーションがとれている。クマから見ても分かるくらい」


専門員を置き、クマ対策の先頭に立つ役場。

役場任せにせず、課題に向き合おうとする関係者や、住民たち。

ハンター 有光良次さん
「あの場所なら撃っていいというのが、具体的に警察もいる場所で理解できた。地形、民家の位置関係、法令を理解している。野生鳥獣専門員が指揮をとってくれることが重要」

 酪農学園大学 環境共生学類 伊藤哲治講師
「一般の住民も、ここはやぶがあって訓練でクマがすごく隠れていたから、もう刈り払おうなどクマがいづらい隠れにくい環境を作るのも一つそれぞれができる対策になる」

住宅地や農地など、人の暮らしのすぐ近くで起きている、クマとの課題。

国が動き始めた今も、浦田さんは、「当事者は地域の住民だ」と話します。

占冠村 野生鳥獣専門員 浦田剛さん
「住民の願いをかなえるために、住民の協力を集約する先として役場があり、担当者がいる。対策した結果として、どんな暮らしを私たちは望んでいくのか。当事者である地域住民と語らって決めていきたい」



酪農学園大学の佐藤喜和教授は野生鳥獣専門員を設けるメリットを2つあげています。

1つ目は「ハンターが減少した今、安定して雇用されること」、そして2つ目が「日頃から地域のクマについて調査・分析し、捕獲以外の対策もできる人がいること」となっています。

この2つの側面を、1人で担っても、複数人で分担してもよく、地域ごとに合う形が求められると話していました。


国が法律を改正し、具体的に動きだしていますので、自分の住むマチのクマの状況や自治体の対策について、興味関心を高めていただければと思います。

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