かつては全国各地にあった趣ある木造駅舎。
乗り換えの時などに歴史が刻まれた建物を見て回るのも旅の楽しみの1つでした。
しかし、無人駅化に加え建物の老朽化も進み、待合室だけの簡易なものに建て替えられる流れが進んでいます。
その木造駅舎を、形を変えて残そうと取り組む男性を取材しました。
入江直樹記者
「出雲市湖陵町のJR山陰線江南駅です。機能的ですが待合室だけの駅になっていて、時刻表もここには貼ってありません。」
かつては木造の駅舎があった江南駅。
2021年に解体され、現在はこじんまりとした駅舎に建て替えられています。
駅員がいない「無人駅」の増加、そして建物の老朽化などにより、今、姿を消しつつある木造駅舎。
ただ、山陰両県は全国的に見ても古い木造駅舎が多く残っている地域ではないかとみられています。
例えば、出雲大社最寄りの旧大社駅。
寺社建築風の壮麗な駅舎は大社線の廃止後も保存され、国の重要文化財となり、現在修復工事が行われています。
また、鳥取県東部の若桜鉄道では、駅舎や鉄橋などの古い施設が国の登録有形文化財になっています。
しかし、多くの古い木造駅舎は徐々に建て替えが進み、山陰線でも最近では出雲市内の荘原駅が建て替えられ、鳥取県琴浦町の浦安駅は間もなく解体される予定です。
入江直樹記者
「こちら大田市の久手駅です。大正時代の鉄道開通当初の駅舎が間もなく姿を消す予定です。」
久手駅の駅舎は青い瓦屋根のこじんまりとした建物。
元の事務室が地区の集会所に使われていましたが、11月にかけて解体されます。
その駅をじっと見つめる一人の男性。
出雲市の原禎幸さん(69)です。
原さんは、独自の方法で段ボールを切り貼りし、建物や鉄道車両など様々な模型を作ってしまう段ボールクラフト作家です。
作品は山陰両県各地で展示されていて、段ボールの断面をいかす独特の作風で知られています。
原禎幸さん
「新聞報道で駅を解体するという記事が載ってたのを目にしたので、どうしても昔の昭和時代を懐かしむ形での作品を作りたいと考えました。」
元国鉄マンの原さんは、山陰線でも機関車やディーゼルカ―を運転。
この駅も、運転する列車から見ていたといいます。
原禎幸さん
「行商の方が沢山乗られて。カンカンという背負いのブリキの缶の上にですね、2つも3つも風呂敷とか箱とか積み重ねて乗っていた。一番のやっぱり思い出です。
一番列車にそういう方々が久手、波根の駅から乗ってきた。お魚のにおいも凄かったですね。」
「久手駅は屋根の勾配が何種類かあって、屋根の重なりそのものも、何か所か重なってる部分がある。やっぱり直接確認しないと制作できない部分もありますし。そういう意味では複雑な造りでした。」
独自に平面の図面を作り、制作中にも3回ほど現場を確認して完成させたという作品は、出雲市内のご自宅の作業部屋にありました。
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