〈衆院選2024 選択的夫婦別姓を求めて〉
①経団連ソーシャル・コミュニケーション本部統括主幹・大山みこさんに聞く
 経団連が6月に公表した「選択的夫婦別姓の早期実現を求める提言」に対し、予想以上の反響がありました。女性はもちろん、経営者や若者など幅広い層の男性からも「経団連、よく言ってくれた」と賛同の声が多く寄せられています。

◆エンパワーメントは急務

 ここ数年、企業は働く人の多様性を尊重し、公平な機会を与えて課題に取り組む「DEI」を経営戦略として重要視しています。多様な背景や価値観を持つ人たちが力を発揮できる環境を整えることはイノベーションの源泉で、企業、ひいては日本社会の持続的な成長に不可欠だからです。

経団連ソーシャル・コミュニケーション本部統括主幹・大山みこさん

 中でも人口の半分を占める女性のエンパワーメントは急務です。女性役員比率などは着実に伸びてきていますが、企業の自助努力だけでは解決できない、社会制度として見直しが必要な課題もあり、その一つが「夫婦同氏制度」です。

◆「旧姓使用」の不便さ

 会員企業と各社の女性役員を対象にした調査では、9割の企業が旧姓の通称使用を認めていますが、通称はあくまで通称です。パスポートに旧姓の「併記」が認められていますが、ICチップには戸籍姓しか登録されませんし、ビジネス上の書類には戸籍姓を記入するよう求められます。9割近くの女性役員が海外出張などで不都合や不利益を感じていると答えています。  何より、自分の「名前」はアイデンティティーにかかわる人権の問題です。女性活躍のためには選択的夫婦別姓が必要だと訴えていますが、その先に目指しているのは、多様な価値観や考え方を受け入れ、力にしていくための「選択肢のある社会」の実現です。  各種世論調査でも制度への賛成が反対を上回っており、あとは政治的な決断だけです。衆院選、そして選挙後には国会で、建設的な議論が進むことを期待しています。(砂本紅年)

 選択的夫婦別姓制度の導入に向けた機運が高まっている。長年、自民党内の保守派議員の反対で導入が見送られてきたが、6月には自民党の有力な支援団体である経団連が早期導入を求める提言をし、9月の自民党総裁選でも争点に。なぜ導入を求めるのか。衆院選に合わせ、さまざまな立場から制度を求める声を伝える。

  ◇  ◇

◆各党の公約は? 野党など6党が「賛成」

 夫婦が結婚後、同姓とするか別姓とするかを選べる「選択的夫婦別姓制度」を認めるかどうかは、衆院選の争点の一つになっている。実現を求める声が高まる中、公明党と野党5党は選挙公約で賛成の立場を明示。一方、総裁選でも候補の意見が割れた自民党は、公約で「合意形成に努める」とし、従来通り慎重な姿勢を崩していない。  政権与党の公明党はこれまでも導入に賛成の立場で、今回の公約でも「性別に関係なく自らのキャリアやアイデンティティーを守る観点」と推進の姿勢を鮮明にした。立憲民主党や共産党、国民民主党、社民党、れいわ新選組も賛成の立場を示した。  国民は「多様な家族のあり方を受け入れる社会をめざす」と付記。共産は別姓を認める制度が導入された場合の子どもの姓にも言及し、「出生時に定めることにし、子どもが18歳になった時点で本人の申し立てにより変更できるようにする」とした。

◆自民は慎重、維新は独自路線

 一方、自民は「旧氏使用ができないことで不便を感じられている方に寄り添い、運用面で対応する」とし、現行制度の中で、結婚前の姓の通称使用を広げる方針を示した。  維新も「同一戸籍・同一氏の原則を維持」とした上で、「旧姓使用にも一般的な法的効力を与える制度(維新版選択的夫婦別姓制度)の創設」を目指すとした。参政党は反対の立場を示した。  選択的夫婦別姓制度は、法制審議会が1996年、導入を含む民法改正要綱を答申したが、自民党内の保守派議員らの反発で国会提出が見送られ、その後約30年、「たなざらし」の状態が続いている。(坂田奈央) 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。