衆院選に合わせ「憲法の番人」と呼ばれる最高裁裁判官の国民審査が実施される。今回は15人の裁判官のうち今崎幸彦長官ら6人を対象に、辞めさせるかどうかを判断する。制度の形骸化が懸念され、法律家らのグループは「最高裁のあり方を考える大切な機会」とし、有権者に関心を持ってほしいと呼びかける。(三宅千智、加藤益丈)

◆辞めさせたければ「✕」記入

15人の最高裁裁判官が裁く大法廷(資料写真)

 国民審査は、辞めさせたい裁判官の欄に「×」を記入し、有効投票の過半数となれば罷免される憲法上の制度。何も書かなければ信任したとみなされる。「○」を含め「×」以外を記入すると無効になる。  裁判官は任命後最初の衆院選の時に審査を受け、信任されると10年間は審査対象から外れる。1949年に始まり、過去25回で罷免された人はない。今回から在外投票が可能になった。

◆「憲法に描かれた理想を実現する役割を果たしているか」

 最高裁は法律や命令などが憲法に違反しないかどうかを最終的に判断する「終審裁判所」と位置付けられる。昨年10月にはトランスジェンダーの人が戸籍上の性別を変更する際、手術を必要とする法律の規定を違憲と判断。今年7月には障害者らに不妊手術を強いた旧優生保護法を違憲と判断し、国会が是正に動いた。  一方で、臨時国会の召集に応じなかった2017年の安倍内閣の対応を違憲と野党議員が訴えた訴訟で、違憲性を示さず訴えを退けるなど、憲法判断に消極的との批判もある。  審査対象の6人が関与した裁判などを紹介するパンフレットを作成した「日本民主法律家協会」国民審査プロジェクトチームの大山勇一弁護士は16日、東京都内で記者会見し「個人の尊厳、両性の平等、学問の自由、生存の権利、民主主義や平和など、憲法に描かれた理想を実現する役割を果たしているか」と疑問を呈した。 

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