日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の代表委員田中熙巳(てるみ)さん(92)が16日、ノーベル平和賞の受賞決定後初めて、さいたま市浦和区の埼玉県立浦和高校で講演した。「広島と長崎の原爆が、人間にどれほどの苦しみを与えたのか。言葉ではなく、感性で受け止めてほしい。核の問題は若い人たちの未来のことだから」と訴えた。

体育館に集まった高校2年生から拍手を受ける田中煕巳さん=16日、さいたま市浦和区の県立浦和高校で(出田阿生撮影)

 講演は平和学習の一環で、受賞決定前に予定されていた。田中さんは2年生約350人に、長崎の爆心地から3.2キロで被爆し、親族5人を失った体験を語った。無数の遺体を前に「何も感じないようにした」ことや、おばを捜しに行ったが、破壊しつくされた爆心地には「何もなかった」ことを伝え「時間がたてば復興すると思うかもしれないが、亡くなった人の時は止まっている」と話した。

◆生徒たち「教科書で学ぶのとは全然違うリアリティーがあった」

 「今の政治家は核兵器の恐ろしさを知らないから、核の抑止力などと言う。核の使用を前提とした言葉。もし使ったら人類は滅ぶのに」とも。唯一の戦争被爆国でありながら、核廃絶に消極的な日本政府の姿勢について「核をなくすために、全力投球しなければいけないはずだ」と訴えた。  生徒たちは「教科書で学ぶのとは全然違うリアリティーがあった」と心に響いた様子。島村大輝さん(16)は「被団協のノーベル平和賞は、ゴールではなく始まりなのだと思った。核を使わせないように、私たちが行動していきたい」と話した。(出田阿生) 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。