列車の接近を知らせる警報機、通行を制限するために降ろされる遮断機が、どちらもない「第4種踏切」。2024年4月6日、群馬県高崎市の第4種踏切で、小学4年生の女の子が列車にはねられて亡くなる痛ましい事故が起きました。そのため高崎市は、第4種踏切を全廃し、国と協力して全額公費負担で遮断機や警報機を設置することを決めました。第4種踏切での事故の発生率は、一般的な踏切の約1.7倍。この踏切が全国で4番目に多い岐阜県の現状を取材しました。

「一瞬、記憶がなくなった」近づく電車に気付かず線路に進入

岐阜県恵那市に住む71歳の男性は、2024年1月、自宅近くにある明知鉄道の第4種踏切「第1宮前踏切」で事故に遭いました。

男性は、いつもゴミを軽トラックに積み、踏切を渡ってゴミ収集所に向かいます。この日、近くに迫っていた2両編成の普通列車に気付かず、男性は線路に進入しました。電車はブレーキが間に合わず、男性の軽トラックに衝突。軽トラックは約20メートルはね飛ばされ、のり面に転がり落ちました。

(事故に遭った男性)
「一瞬、記憶がなくなった。気が付いた時には、車のドアが開いたので、そこから出て。線路づたいに歩いて、人がいたので救急車を呼んでもらった」

男性は顔に13針縫うけがを負いましたが、奇跡的に命に別状はありませんでした。今でも週に2回、ゴミ出しのためにこの踏切を渡っています。ここを通らないと、大きく回り道をしなければならず、踏切が生活の一部となっているといいます。

事故の後、一時停止を呼び掛ける看板や、停止線が新たに設けられましたが、依然として、警報機も遮断機もないままです。

(事故に遭った男性)
「(看板の設置は)僕に言わせれば明知鉄道の気休め。事故があったから対策で付けました、という感覚でしかない。遮断機と警報機があれば一番問題ない」

警報機と遮断機の設置には「2000万円~3000万円の費用」が…

第4種踏切はこの20年で半減したものの、全国にまだ約2400か所あります。岐阜県内には、明知鉄道などローカル線を中心に109か所。全国で4番目の多さです。

国は、警報機や遮断機を設置するか、渡れないように踏切を閉鎖するよう求めていますが、鉄道事業者側も苦しい事情を明かします。

(明和鉄道 渡邉康正専務)
「第4種踏切の解消については鉄道会社として努力しなければいけないが、廃止するとなると、利用している住民の反対意見がある。(警報機と遮断機を設置する)第1種化については、経費などいろいろな問題があるのですぐには対応できない」

警報機と遮断機を設置するには、1か所につき2000万円~3000万円の費用がかかります。JR東海などは、第4種踏切を廃止し、利用状況に合わせて第1種化を進めています。国は踏切整備の補助金を出していますが、明知鉄道のような地方の赤字ローカル線では、なかなか設置は難しいのが現状です。

(明和鉄道 渡邉康正専務)
「(お金は)乗客の安全を確保するために使っている。線路を横断する人のためにさらに投資するとなると、やはり優先順位としては次になってしまう」

「第4種踏切」がこども園の目の前にも…

岐阜県恵那市の「明智こども園」の目の前にも、第4種踏切があります。散歩の時はいつも、この踏切を渡らなければなりません。先生が注意深く見守りながら、交通ルールを教えることで、子どもたちは地域に数多く残る第4種踏切の渡り方を学んでいます。

(明智こども園 増田尚子園長)
「(子どもは電車に)興味があるので、近寄りたくなる気持ちもある。職員が『気を付けて渡るよ』と言葉にして伝えながら渡っています」

危険でありながら、なくならない第4種踏切。JR西日本では、費用が10分の1で済む「手動の遮断機」を応急的に設置し、事故が減少しています。地域の暮らしに必要な踏切をなくすのか、税金を投じて残すのか、少子化や過疎が進む地方での対策が求められています。

CBCテレビ「チャント!」4月17日放送より

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