能登半島地震の被災地で、土ぼこりなどの粉じんを吸い込み、被災者らが呼吸器疾患に悩まされる例が多発している。東日本大震災では、自宅の片付けをしていた被災者が持病を悪化させ亡くなったケースもある。石川県の被災地で9月に発生した記録的豪雨の後、大量の土ぼこりが舞う地域もあり、専門家は「マスク着用を」と呼びかける。(高橋雪花)

乾燥した土ぼこりが舞う中、流木の撤去をする作業員=1日、石川県輪島市町野町で

 「寝ていても、せきですぐに起きる夜が続いた」。輪島市三井町に住む市議の門前徹さん(57)は6月、公立穴水総合病院(穴水町)にある能登北部呼吸器疾患センターで、ぜんそくと診断された。地震で壊れた自宅屋根の修理で、大量に落ちてきたカビ臭い土ぼこりを吸い込み、翌日からせきが止まらない。  1月にも、半壊した隣家で崩れた土壁の片付けを手伝い、3日ほどひどいせきが続いた。豪雨では、経営する会社社屋に土砂が押し寄せ、復旧に追われる。「車が走ったり風が吹いたりして、ずっと土ぼこりが舞っている。また吸い込んでしまうだろう」

大雨による冠水から1週間を迎えた石川県輪島市で片付けに追われる住民(手前)ら=9月28日、石川県輪島市河井町で

 公立穴水総合病院では、1~8月の外来患者の延べ人数が、前年同期と比べ急性気管支炎で2.5倍。ぜんそくは1.7倍、急性肺炎は1.6倍に増えた。石崎武志・能登北部呼吸器疾患センター長は「解体などで街全体が粉じんに覆われていることや、倒壊家屋で被災者が後片付けをしている影響だろう」と話す。

◆東日本大震災直後も症状悪化が目立ち

 東日本大震災直後の石巻赤十字病院(宮城県石巻市)でも、ぜんそくや慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)悪化で入院した人が平年より多かった。矢内勝院長補佐は「粉じんの影響が最も大きかったのでは」とみる。津波で自宅が被災し、マスクなしで片付けていた男性が粉じんを吸い、持病の間質性肺炎が悪化して亡くなる例もあった。  豪雨後の粉じん被害について、石崎さんと矢内さんはいずれも「リスクがある」と指摘する。石崎さんは「粉じんの多い場所に行く場合はマスク必携。大声を出すのを控え、粉じんの吸入を抑えることも予防の基本」と助言している。 

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