投票用紙の“書き心地”について、考えたことはありますか?

10月27日に衆議院議員選挙が投開票を迎えます。実は選挙で使われる投票用紙について、SNSなどではこんな評判が溢れているんです。

『投票用紙の書き心地がめちゃくちゃいいのでぜひ体験してほしい』

『独特の質感、文房具好きとしては見逃せない』

これは一体どういうことなのか?投票用紙の知られざる姿に迫りました。

(初出:2024年3月15日)

「触り心地 好きなんです」

取材の始まりは今年3月の熊本県知事選でのこと。実際に投票を終えた人に、「投票用紙の書き心地」について感想を聞いてみました。

投票した人「さらさらしていて気持ちよかった、書いていて」

「若干柔らかい書き心地がしたかな。鉛筆がちゃんと乗る感じ」

「触り心地が好きなんです 結構…触ってます」

手触りの虜になる人もいる投票用紙。実は原材料に秘密があるということで、投票用紙のメーカーに話を聞いてみました。

紙じゃなかった!?

ユポ・コーポレーション営業本部 加工品部 鹿野民雄さん「紙のように見えるんですけど、実はプラスチックでございまして。ポリプロピレンです」

投票用紙の正体は、木材を原料とする「紙」ではなく樹脂を使った「フィルム」に近いもの。表面の細かな凹凸が鉛筆の芯をほどよく削りとることで、なめらかな書き心地が生まれるのだといいます。

SNSで書き心地が度々話題になることについては、どう感じているのでしょうか?

鹿野さん「そういったご意見はすごく大事にしております。我々も事業を取り組む上で有権者の皆様の声は非常に励みになりますので。そういう声に耳を傾けながら『しっかりとしたものを供給していかなきゃいけない』と日々思い、仕事をしております」

さらにこの投票用紙、開票作業がしやすいよう折り曲げても開くようになっているんです。

40年前は、投票用紙を一枚一枚開いていた…

この投票用紙は、1980年代に自治体が抱えていた課題がきっかけで開発されました。

鹿野さん「当時は紙ベースの投票用紙が使われていた。(開票の)時間がすごくかかるみたいで、何とか開票時間を圧縮させるいいアイデアはないかと」

1980年の開票作業(左)と2020年の開票作業(右)

実際、一般的な紙が使われていた時代の開票作業は票を開いてまとめるのに手間がかかっていました。それが現在では、投票箱から出て来た用紙は既に開いた状態になっています。

その実力を一般的なコピー用紙と比較してみると、一目瞭然。

折り曲げた状態から手を離すと、コピー用紙は折り曲げた形のままですが、投票用紙はすぐに半分以上開いた状態になりました。

これが、開票作業の効率化につながっています。

投票用紙が意外なものに生まれ変わる

ところで、選挙が終わったら投票用紙はどうなるのでしょうか?

自治体ごとに処分されますが、プラスチックとしてリサイクルする場合もあります。熊本市などから投票用紙のリサイクルを請け負う企業では、投票用紙をハンガーなどの原料として加工しています。

さらに、粉砕した投票用紙を木くずなどと混ぜ合わせ、RPFと呼ばれる固形燃料も作っています。

エコポート九州 小野尚土さん「箱に入った未開封の状態で直接破砕機に投入する。石炭の代替として、製紙メーカーなどの燃料として使われています」

RPFの特徴は、石炭と比べて二酸化炭素の排出量が約30パーセント低いこと。

2022年に自治体や企業などにプラスチック資源の再利用を促す法律ができたことで、熊本県内でも投票用紙のリサイクルを検討する自治体が増えているといいます。

固形燃料RPF

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