橋下徹氏が大阪市長を務めていた時期の、橋下氏と市職員のメールの“保存”をめぐり、大阪地裁で裁判が起きています。4月26日には、橋下氏自らが証人として証言台に立ち、“職員との1対1のメールについては、内容に応じて保存か削除を判断していた”と説明しました。

衆院選遊説中は「メールで仕事」弁護士が大阪市に情報公開請求するも…

まず、経緯についての解説です。

弁護士の服部崇博氏(大阪弁護士会所属)は、橋下徹・大阪市長(当時)が2012年11月中旬から12月中旬にかけ、「日本維新の会」の代表代行として、衆院選の選挙運動で全国を遊説し、市役所に登庁しなかったことを問題視。

橋下氏が「メールで市長の仕事をしていた」と主張したため、服部氏は、その期間に橋下氏が市職員と1対1で送受信した全てのメールを公開するよう、2013年に大阪市に情報公開請求をしました。

ところが大阪市が「非公開決定」を出したため、服部氏はこれを不服として、2014年に大阪地裁に提訴。大阪地裁は非公開決定の取り消しを命じる判決を下し、市側は控訴・上告しましたが、2018年にその判決は確定しました。

勝訴したのに…市側が「1対1メールは存在しない」

ところが2018年12月、大阪市は服部氏に対し、「対象期間の1対1メールは存在しない」として、改めて非公開決定を出しました。

服部氏は「2012年11月下旬の橋下氏と鶴見区長の1対1メールを裁判で証拠として提出していたのだから、公開請求の対象のメールは存在していたはず」「裁判が確定するまで、メールを適切に保管するべき注意義務があったのに、メールを廃棄したのは違法。精神的苦痛も被った」として、2021年、大阪市に対し200万円の賠償を求め、改めて裁判を起こしました。

橋下徹氏本人が証言台に

大阪地裁で4月26日に開かれた裁判の口頭弁論で、橋下徹氏が証人として出廷。メールの取り扱いについて説明しました。

橋下氏によると、

▽複数人のアドレスで送受信されているメールは、原則保存
▽市職員と橋下氏が1対1でやり取りしたメールについては、保存するか否かを個別に判断

という運用を大阪府知事時代に採用。大阪市長となってからも、その運用を踏襲したということです。

橋下氏の証人尋問のやり取りは?「出せないことはメールで相談受けていた」

《4月26日の証人尋問でのやり取り》

原告・服部氏の代理人弁護士「(知事時代の)1対1のメールの振り分けは?」

橋下氏「私的な、公にできないものはキーアドレス(情報公開請求があった際に対応するための、いわゆる“保存用”アドレス)に送らず、内容を見て公開の必要があるとなればキーアドレスに送っていた」

弁護士「このルールの枠組みは職員から提示された?」
橋下氏「府の法務担当がルールをつくった」「1対1のメールで、個人の悩みやハラスメントの相談とか、人事への不満とか、“出せないようなこと”は、面談で全部聞くのは無理なので、メールで相談を受けていた。これは情報公開担当に渡さず(=キーアドレスに送らず)僕が削除していた」

弁護士「市長時代はメール保存の運用について、府知事時代のやり方を踏襲した?」
橋下氏「はい」

弁護士「複数人のアドレスで送受信されているメールはキーアドレスに送る一方、1対1メールはキーアドレスに送るものと送らないものがある?」
橋下氏「そうです」「外形的に1対1メールは非公開。ただ、具体的な中身をみて公開するものもあるので、それは選挙で選ばれたものとして、政治責任を負って判断したつもりです」

徳地淳裁判長「(1対1メールの)削除のルーティンについて、期間はどれくらい?(ハラスメント相談などの)センシティブなメールの」
橋下氏「できる限りそのつど。1か月とか。空いてる時にやる」

裁判官「半年間隔や1年間隔?」
橋下氏「そこまではいかない」

そのうえで橋下氏は、1対1メールについて、職員に削除を指示したことはないと断言しました。

証人尋問終了後、橋下氏は裁判所の外で報道陣の囲み取材に応じましたが、「裁判に影響するのでコメントはできません。判決が出れば取材は受けます」としました。

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