軽井沢町で長野県内では初めて26日からライドシェアが始まりました。
一般のドライバーが自家用車などを使って有料で乗客を運ぶサービスで、国が観光地などのタクシー不足の解消を狙って、全国の一部の地域で解禁しました。
まったく別の業界からの参入も予想されるため、ドライバーを雇用する事業者からは、安全の確保などについて不安の声も上がっています。


軽井沢町で行われたライドシェアの出発式。

大都市を中心に県外の12区域では導入が決まっていましたが、自治体からの申請を受けて国が認可を出したのは軽井沢が初めてです。

土屋三千夫町長挨拶:
「タクシー運転手の人材確保に努め、今回の日本型ライドシェアといった新たな試みを組み合わせて対策を講じることで、住民や来訪者などの交通不便を解消し、保健休養地の魅力向上を図ってまいります」

軽井沢では町内のタクシー協会に加盟する5社のうち4社がライドシェアに参入しました。


ドライバーは、会社と雇用契約を結び、車は、本人の自家用車を中心に使用。

26日までに、あわせて248人から応募があり、8人の採用が決まりました。

ドライバーとして働くことになった大町市在住で自営業の広越智岳(ひろこしともたか)さんは、短時間で働けることに魅力を感じたといいます。

広越智岳さん:
「(本業で)しょっちゅう移動するので、その間で、仕事を長時間をすると疲労がたまったりするので、短時間で仕事ができるというところが魅力」

ライドシェアの利用は、専用のアプリから申し込みます。


運賃はタクシーと同額で、乗り降りする場所を入力すると事前に料金が決まり、原則キャッシュレスで支払います。

運行は、タクシーが不足する地域や時間帯に限られていて、軽井沢では町内全域を午前8時から午後1時までと、午後4時から翌日午前0時までと決まっています。

ライドシェアが解禁された背景には、観光地などで深刻な問題となっているタクシーのドライバー不足があります。


軽井沢タクシー協会の松葉和彦会長が営むこの会社では、今年10人を新たに採用しましたが、2023年の繁忙期を考えると、まだ人手は足りていないといいます。

松葉会長:
「ここで電話番をしてますと、タクシーがあと何台あったら足りるかなという話を管理者のみなさんとしたりすることがあるんですけど、100台あって足りるかなって」

町内では、2023年5月に新型コロナが5類に移行してから観光客が急速に増えていて、2023年の7月と8月は、コロナ前の2019年と比べて83%まで回復しています。

松葉会長は、ライドシェアは人手不足の解消につながると期待を寄せる一方で、課題もあると話します。


松葉会長:
「目的地に安全に輸送を本当にしてくれるんだろうかという。安易な考えのままやられると困るんですよね。もし事故が起きた時とか、もし何かが起きた時、対処の仕方もそれぞれだと思うが、ちょっとそこは本当に私も不安ですね」

安全性の確保は、会社側が担うことになり、事前に研修を行うことや、対人8000万円以上、対物200万円以上の任意保険に加入することなどが求められます。

松葉タクシーでは、東京の協会が定めるガイドラインなどをもとに、合計10時間を目安としたドライバーへの研修を行うことにしています。


まずドライブシミュレーターによって、各ドライバーの運転特性を診断し、それに基づき座学と実地研修で運転の指導を行います。

研修期間は3日から4日ほどを想定しています。

運行は、アプリで地図に表示されたルート通りに走ることが想定されていますが、松葉さんは、渋滞を避けることや、別荘地へ向かう際などに、細く入り組んだ道を覚えることも必要と話します。


そのほか、車両にドライブレコーダーを設置したり、タクシーと同じように3か月ごとに、車両の点検・整備を行ったりして安全性の確保を目指します。

ドライバーに応募し採用された広越智岳(ひろこしともたか)さんは、事業者に雇用されることが仕事をするうえで安心につながると話します。


広越智岳さん:
「裏道になると自分が走っててもナビアプリで道ないとこ案内されたりってあるので、地元のタクシーに所属して仕事するので、地元に強いドライバーさんが身近にいるっていうのは安心」

タクシー事業者にとって、もうひとつの課題が、他業種の新規参入です。

国は、地域や時間の制限撤廃などともに、6月までに参入のルールも整えていく方針です。

海外では、配車を行うアプリの事業者が、個人のドライバーも管理する方法が普及していて、一般的にタクシーより安く利用できるといわれています。


松葉会長:
「タクシーは高いというイメージがどうしてもあると。今は日本版ライドシェアということで我々に託されていますが、それが本当のライドシェアになった時、料金体系もどうなるかよくわかりませんが、かなりお客さんを取られてしまうんじゃないかなという危機感はもっていますね」

ライドシェアは、県内を代表する観光地の課題解決につながるのか。

いよいよ始まる本格的な観光シーズンで、その効果が試されます。

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