台風19号災害から5年、長野市長沼地区で決壊した千曲川の堤防からおよそ500メートルほどの場所に住んでいた当時小学4年生だった少年が、災害を教訓にあるアプリの開発を進めています。

目指すのは、災害時の逃げ遅れゼロです。

「僕たちは災害の逃げ遅れをゼロにするには、どうしたらよいかという問いを持って活動を進めてきました」

こう話すのは、信州大学教育学部附属長野中学校3年生の石島柊太さん。台風19号災害の経験を生かして仲間と防災アプリの開発に取り組んでいます。

5年前の2019年10月13日。長野市の長沼地区で、千曲川の堤防が決壊し、当時小学4年生だった柊太さんも被災しました。

当時の柊太さんの家は、決壊箇所からわずか500メートルほどの距離。心待ちにしていた家が完成し、住み始めたばかりの出来事でした。

石島柊太さん:
「災害が発生する半年前に新しく建ててすぐに流されてしまいました。まさかこうなるとは思っていませんでした」

家は傾き取り壊しを余儀なくされ、柊太さんは「悲しみというか絶望感がすごかった」と振り返ります。

決壊した堤防もよく訪れていたという柊太さん。

被災状況をテレビで見て、普段の生活が、一瞬にして奪われてしまうことを実感しました。



中学3年生となった柊太さんは今年、仲間5人と防災アプリの開発を始めました。

石島柊太さん:
「自分が被災をして悲しい思いをしていたんですけど、それをそのままにするのはもったいないと思って、経験した人だからこそできることはあると思うので、経験した人がこれからの人に何かしていくべき」

目指すのは災害での「逃げ遅れゼロ」です。

被災した地元の人たちに当時の状況を聞き、浮き彫りとなった課題を知りました。「区長や常会長が電話で一人ひとりに避難を呼びかけ、一軒一軒回っていた、増水する中で危険な状態だったという人もいた」と言います。

さらに、「いつ逃げるのか」、「どこへ逃げるのか」、避難をする住民側も難しい判断を迫られたことも分かりました。

そこで柊太さんたちは、避難をする側と避難を促す側、それぞれの立場で利用できるアプリの開発を進めています。

スマホでGPSを使用し、「オンにすると、区長などに位置情報が伝わって、誰が避難しているのか、また誰が避難していないのかが分かる」仕組みです。

また、住民側が利用するスマートフォンでは、大雨などで警戒レベル3以上になると、位置情報を通知するGPS機能が使えるようになります。

画面上で、すでに避難している場合には「避難しました」を押して、避難できずに困っている場合は、「連絡ください」を選択します。その操作をするだけで、情報が区の役員のスマートフォンに届くと言います。

また、自分の住む地区の常会長や区長からのメッセージを受け取ることができます。そこには、「顔を知っている人からメッセージがあると、危険だということが伝わりやすい」という狙いがあります。

常会長や区長などはスマートフォンで誰が避難したのかわかるため、1軒1軒回って確認する必要がなくなり、避難していない人に絞って声掛けできます。

学習発表会のリハーサルとして、同級生に開発中の防災アプリについて説明をしました。



同級生からは「逃げるのが遅いのは高齢者だけど、高齢者はアプリをインストールしていなかったり、使いこなせなかったりするのではないか」といった指摘もありました。

柊太さんは「できるところまでやったと思っていたんですけど、まだまだ他人からの意見を聞くと改善の余地がある」として、多くの人の意見をアプリに反映していきたいと言います。

石島柊太さん:
「逃げ遅れがゼロになることが一番の夢です。だんだんと風化してきてしまっている気がしていて、そのような中で災害が起こると、また死者が出てしまうかもしれない、同じことを繰り返さないようにするために真剣に対策を考えていきたいと思います」

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