「誰もいない状況でないと、お伝えすることができない案件になっております」

これは特殊詐欺グループからかかってきたとみられる電話の実際の音声。男性とみられる電話口の相手は、すぐに“人払い”を要求した。

役所職員や警察官などを装って電話をかけ、金をだまし取る詐欺事件が沖縄県内で相次ぐなか、RBCでは、警察官を名乗る人物が県内の女性から個人情報を聞き出そうとする実際の音声を入手した。数々の不審な点と、それでも信用させようとする巧妙な語り口とはー

まず人払いを要求「誰もいない状況でないと、お伝えできない」

▽電話口の男
「私は警視庁捜査第2課から連絡をとっております」
「(詐欺グループの)資金洗浄にですね、Aさんが加担しているのではないかと容疑をかけ連絡を取っている」

着信時のイメージ


今月3日の日中、県内在住のAさんにかかってきた電話。相手は、警視庁所属の警察官の身分をかたる男だった。

▽電話口の男
「エガワユタカをはじめとする、詐欺グループによる資金洗浄特殊事件、こちらの捜査を進めております」

「主犯格の1人であるね、エガワ、こちらはもう既に逮捕しているのですが、同時にこの容疑者の自宅から大量のキャッシュカード、通帳、携帯電話等を押収しており、その中の1枚に、Aさん名義で開設されたB銀行のキャッシュカードを押収しております」

▽電話口の男
「Aさん、逮捕されたエガワとはどういったご関係ですか?」

電話口の男は警察官の身分を名乗った


警察官の身分をかたる男は、資金洗浄=(犯罪で得た資金の出どころを分からなくする行為)への関与が疑われていると、Aさんの不安をあおった。

▽電話口の男
「今回押収したB銀行の口座、開設する際に身分証提示されて開設されているんですよ」
「情報を読み上げますので、確認していただいても宜しいでしょうか。〇〇市▲▲…」

すらすらと住所を読み上げる。不審に思ったAさんは、個人情報に関する問いには答えず、「直接警察に行く」と伝えた。すると…

▽電話口の男
「この事件は非公開捜査中で、最寄りの警察署にこの情報を伝えたとしても、おそらく刑事さんは何のことか全く理解はしていないかと思います」

音は食い下がったが、最終的にはあきらめ、電話は切れた。

“詐欺電話”の生音声… 特徴は

取材にあたった神里記者は今回の詐欺の特徴をこう解説する。

ー女性は全く身に覚えがないマネーロンダリング、資金洗浄への関与が疑われていると不安をあおられ、個人情報を聞き出されるところでしたが、冷静に対応し被害を免れました。

今回の電話は最近被害が多い特殊詐偽の典型的な手口だとみられますが、1つ特徴がありました。着信があった携帯電話の画面をよく見ると、日本国内からの発信ではなく、アメリカ合衆国からの発信を示していたんです。この点を不審に思った女性が問い詰めると、電話をかけてきた人物は次のように話しました。

「詐欺電話」はアメリカからの発信と表示された


▽電話口の男
「容疑がかかっている方に我々警察の番号を通知しておかけした場合、取らない可能性、逃亡される危険性が非常にあったため、今回このような対応をとらせていただいております」

ーなんとも苦しい言い訳です。実は、国外から電話をかけるというのも、こうした詐偽の特徴の1つです。

また電話の冒頭で、「誰もいない状況でないとお電話でお伝えすることができない案件です」と、女性が1人になるよう促しています。通話中に第3者に相談したり、不審がったりしないよう、他人の介入を避ける狙いがあったとみられます。

今回の女性は被害を免れましたが、同様の別のケースでは、無料通話アプリLINEを使って偽の逮捕状を示された30代の男性が600万円をだまし取られるなど、多くの被害が出ています。いつ自分にかかってきてもおかしくないと考え、警戒する必要があります。

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