パレスチナ・ガザ地区での戦闘が始まってから、10月7日で1年。以前『今日ドキッ!』(HBC北海道放送 月曜~金曜午後4時50分OA)でもお伝えしたHBCの金子記者23歳のとガザの友人の話題です。
テレビ局の記者としてはめずらしい国民スポーツ大会の北海道代表になった金子記者。戦闘により大会に出場できなかった友人の悔しさを胸に大会に臨みました。
戦闘が続くパレスチナのガザ地区。
アブデさん(23)
「一番つらかったのは、2人のいとこを亡くしたことだ」
現地の悲惨な状況を語るのは、ガザ地区からエジプトへ避難したアブデさん23歳とモハメドさん23歳です。
アブデさんは、パレスチナを代表するパワーリフティングの選手で、2年前の世界学生大会では、銅メダルを獲得しました。
2024年の世界大会にも出場する予定でしたが、戦闘により断念しました。
HBC報道部の金子記者は、アブデさんの悔しさを胸に、国民スポーツ大会に出場しました。
金子記者は警察担当の記者として、道内の事故や事件を取材しています。
月に数回、泊まり勤務もある金子記者。夜勤明けに向かった先は…
金子記者
「こんにちは。」
トレーニングジムです。
金子記者のもう一つの顔。それはパワーリフティングという競技の選手です。
2023年の世界ジュニア選手権大会では26位。
パワーリフティングは、脚の力を試す「スクワット」、上半身の力を試す「ベンチプレス」、背中と足の力を試す「デッドリフト」の3つの種目の総重量を競います。
金子記者は2024年、国民スポーツ大会の北海道代表予選で優勝。本戦への切符を手にしました。
金子記者
「去年の世界大会では悔しい思いをしたので、次は国スポ(旧国体)で必ずメダルを目指して頑張ります」
練習は、1日2時間を週5日。
金子記者
「だらだら料理していたら時間が無くなる。睡眠も命なので。時間との勝負」
トレーニングが終わり、平日は帰宅するのが午後11時半。
多忙な生活の中、トレーニングを続けられる理由のひとつに、9000キロ離れた友人の存在がありました。
避難所でトレーニングしているのは、ガザ地区のパワーリフティング選手、アブデ・スカイクさん(23)。
戦闘により、自宅は破壊され、2人のいとこを亡くしました。
アブデさん(23)
「ガザでの暮らしはとてもつらかった。毎日多くの人が病気により亡くなっていた」
アブデさんは4月、パレスチナのスポーツ協会から支援を受け、父親とエジプトに避難しました。
モハメッドさん(23)
「アブデが避難できたのは奇跡だ。しかし、母親や妹は未だにガザ地区に残されています」
「エジプトに避難できた人は、思っているほどいい人生を送れていない。常にガザのことを考えている。家族を残して避難できたことに、罪悪感を感じている。」
この状況で、ビザを取得するのも難しく、2024年の世界大会には出場できませんでした。
金子記者はこれまで、アブデさんの避難生活や道内でデモ活動する団体を取材してきました。
金子記者
「アブデの頑張っている姿をSNSで見て、(練習を)やらなければと思う。アブデや亡くなった彼の友人のためにも、必ず勝ちます」
金子記者
「到着しました」
佐賀県で現在開かれている国民スポーツ大会。
金子記者が出場する93キロ級には、フィジカルの強い選手が揃います。
まずは、得意とするスクワット。3回目、270キロを立ち上がれば3位圏内も見えてきます。
なんとかクリア。
課題のベンチプレスは、自己ベストタイの157.5キロを押し上げますが、最後の165キロは惜しくも失敗。
この時点で金子記者は、3位の記録とタイ。
表彰台に上るには、最後の種目のデッドリフトで270キロはあげなければいけません。
ここも難なくクリア。
しかし、3位を争っていた選手が直後に300キロを引き上げ、金子記者は4位となり、惜しくも表彰台に登ることはできませんでした。
金子記者
「思っていたとおりにはいかなかった。言い訳してはいけない。アブデが避難所でもトレーニングしている姿を見たら、自分も多忙な仕事ではあるが、彼と比べたら全然大したことないので、自分はもっとできると思う」
金子記者は試合後、アブデさんに結果を報告。
金子記者
「結果は4位だった。トータルは697.5キロ。トータル720キロ上げたかったよ」
アブデさん
「試合当日は、なかなか思うようにいかないよね」
金子記者
「エジプトで会えることを楽しみにしている」
モハメドさん
「もちろんだよ」
アブデさんと、再び同じ大会に出られる日まで、戦争反対の声を伝え続けようと強く思ったという金子記者。
11月にはエジプトに行き、アブデさんと2年ぶりに再会して、一緒にトレーニングする予定だということです。
“パワーリフティングで日本一を目指し、アジア大会でアブデさんと対決したい”
そのためにも一日も早いガザでの停戦と、スポーツができる平和な日がなによりも必要です。
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