2014年7月、長崎県佐世保市で当時高校一年生だった女子生徒が同級生を殺害した事件。「人の尊厳を踏みにじった快楽殺人」。家庭裁判所の決定要旨でそう断じられた加害者の元少女は、2024年夏に医療少年院の収容期限を迎えました。元少女への「矯正教育」は成果として現れているのか?そして元少女のこれからは?

長崎家裁決定要旨より・非行事実
2014年3月2日深夜、佐世保市の自宅で就寝中の父親の頭部を金属バットで殴打したが、全治2週間の外傷性くも膜下出血などを負わせたにとどまり、殺害の目的を遂げなかった。
14年7月26日夜、1人暮らしをしていた佐世保市の少女宅で、同級生の高校女子生徒の後頭部をハンマーで多数回殴打し、頸部をタオルで絞めるなどして殺害した。同日夜、生徒の財布から現金を窃取。同日夜から翌日、少女宅で包丁などで死体を損壊した】

同級生:
「僕は中学生の時から(2人と)一緒の学校だったので、それで(加害者とも)喋らないっていうわけでもなくて、割と喋ってた」

加害者と被害者、2人は同じ高校の同級生でした。その学校に通っていた同級生の男性です。

同級生:
「何かおかしいなって気づいたのは僕が部活をした時ですね。上空にヘリコプターが飛び始めて、先生か放送か忘れたんですけど『中に入ってくれ』って言われて。20~30分待機してる時に、携帯を持っていたのでみんなで何が起こっているのかを調べてたら、その被害者の方がですね亡くなられてるっていうのをニュースでそこで初めて知ったっていう状態です」

「体の中を見たかった」少女が語った犯行理由

殺人容疑で逮捕されたのは15歳の女子高校生。
首を切断するなど、遺体を激しく傷つけており、警察の取り調べに対して「人を殺したかった」「体の中を見たかった」という趣旨の供述をしました。

同級生:
「その事件が起きて初めて登校した時ですね。もう本当にもう誰も一言も話せないしやっぱり仲良かった人とかも、泣いてる人もいたりとか、先生も冷静ではなかったらしいですね。学校から笑顔が消えたというか…。高校1年生のフロアは全部統一されているんですが、その階はもう本当に誰1人笑える状態ではなかった。もう事件一・二ヶ月後は本当に普通じゃない状態が続いてた学校全体がですね」

長崎家裁決定要旨より・非行に至る経緯
小5当時、下校中に見た猫の死骸に引き付けられ、猫を殺すようになった。小6時に給食に異物を混入させた。継続的カウンセリングが必要との意見も出たが、父が反対したこともあり適切な対応は取られなかった】

【中学では親しい友人もでき、学校生活にもなじんでいた。一方、猫を殺すだけでなく解体するようになり、さらに人を殺したいと思うようになった】

【13年10月、中3時に実母が病死した後も殺人欲求はなくならず、父殺害を具体的に計画するようになった。14年3月2日深夜、少女は父の寝室に侵入し、バットで父の頭を数回殴打したが殺害に至らなかった。父は救急車で搬送され治療を受けたが警察に届けず、関係者にも警察沙汰にしないように求め、事件にならなかった

【少女は殺害失敗でさらに殺人欲求が強まった。父は原因が分からず、少女を精神科に通院させたが、欲求がなくなることはなかった】

「殺人未遂」隠した父 そして事件は起こった

殺人への強い欲求があった元少女。
小学生の時からいくつかの深刻な問題行動が確認されていました。
小学生の時、給食への洗剤混入。
小学生から中学生にかけて、猫殺し。
高校に上がる直前、父親を金属バットで殴った殺人未遂。

しかし、問題の隠ぺいを望んだ親の行動などが壁となり、少女に対して適切な対応がとられることはありませんでした。

悪いことを悪いと教えられずに成長した元少女。事件の8カ月前、中学3年だった時に母親が病気で死亡し、その後父親が再婚したことが事件の引き金になったと指摘されたこともありました。そして事件は発生してしまいました。

長崎家裁決定要旨より・非行に至る経緯
【高校に進学し、少女はマンションで1人暮らしを始めた。少女は高校に通学せず、その時間で図書館に通い、過去の少年事件・審判を調べ、未成年者の場合は死刑になる例が少なく、16歳を超えると刑事罰を受ける可能性が高くなることなどを知り、16歳になる前に殺人や解体の実行を決意した】

【少女を診察していた医師が少女の特性に気づき、放置すれば殺人に至る危険があると判断し、14年6月10日、児童相談所へ電話で相談したが対応を取り付けられなかった】

【父はこの時、少女が猫を殺していると知ったが、児相や警察への相談をためらい、少女が1人暮らしを続けることを認めた】

【7月25日、父は医師から少女が人を殺す危険があるので相談するように促され、児相に電話したが時間外で相談できなかった。7月26日、少女は女子生徒を自宅で殺害、遺体を損壊した】

体の中で、自分では制御できない殺人への欲求が膨れ上がっていく中、元少女は「16歳になると処分や刑罰が重くなる」ことを調べ上げ、綿密・周到に準備して欲求を実行へと移しました。

遺体をもてあそんだ快楽殺人

少年審判を経て医療少年院へと送られた元少女。
家裁の決定要旨の処分理由には【殺人や死体解剖の欲求を満たすため、少女を信頼して無防備だった友人に突然襲いかかり、想像を絶する苦しみを与えながら生命を奪い、遺体をもてあそび、人の尊厳を踏みにじった快楽殺人。その残虐さ、非人間性には戦慄を禁じ得ない】

【被害者の無念さや苦痛は筆舌に尽くしがたく、遺族らは和らぐことのない悲しみ、やり場のない怒りに苦しみ続け、厳罰を望んでいる】と書かれています。

母親の死 その時少女は

加害元少女の父親の知人:
「僕は最初●●の娘が被害者だと思ったんですよ。私もそうだったし結局担当した弁護士も被害者側と思って初め受けてるんですよ」

加害者となった元少女の父親の友人だった男性です。

元少女の父親の知人:
「最初は噂レベルで日曜日(翌日)の朝方に聞きました。動揺と言うか何が何だか分からない感覚だったですね。それから1時間もたたないうちにその父親から電話が入って。事件のことを言うのかな?と思ったら事件の起こった翌々日に同級生で飲む約束をしてたので、それが「自分が行けない」という風な話を淡々とした電話だったので。娘がどうこうという話じゃなかったですね…」

男性は元少女のことも小さい頃から知っていて「ちょっと変わった子だな」という印象を持っていたといいます。

元少女の父親の知人:
「加害者の子の実のお母さんがですね、亡くなった時に自宅での仮通夜、そして会館での通夜・葬儀って行った中で何か「普通の子と違うな」っていうイメージはあったんですよ」

「普通の中学3年生だったら自分の愛する母親が亡くなって泣きじゃくると言いますか冷静な判断ができない、ただ悲しい悲しいだけだと思ってたんですけれども、結局仮通夜から葬儀までの間に彼女は涙もなかったですもんね。涙だけじゃなく彼女はなんかすごい色んなものを観察しているように感じたんですよね」

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