2023年まで駐中国大使を務めた垂秀夫(たるみ・ひでお)氏が5日、北海道大学で開かれたシンポジウムで基調講演し、中国と向き合う際に「中国と中国共産党は分けて考えるべきだ」と述べ、さまざまな問題を戦略的に考える重要性を強調しました。

垂秀夫氏は、2023年12月まで3年にわたり駐中国大使を務め、「中国が恐れた外交官」として知られています。

垂氏は基調講演で、9月に中国南部・広東省深セン市で、日本人学校の男子児童が、男に刃物で刺されて死亡した事件に言及。

「本当に痛ましい事件だ。それに対して中国政府が『偶発的事件だ』とか『どこの国でも起きることだ』という位置づけをしていて、ほぼ間違いなく、多くの日本の方々は本当に憤っている」と指摘しました。

また、沖縄県の尖閣諸島周辺への領海侵犯など、近年の中国の動きについても「多くの日本国民が『許せない』という思いを強くしていると思うし、非常に理解できる」とも述べました。

一方で、長年にわたり中国と向き合ってきた経験から、「感情だけで動いていいのか、もう一度、できるだけ冷静に、客観的に物事を見ていく必要がある」とも説明。

「中国=中国共産党ではないし、中国共産党=中国でもない」「中国=中国共産党だと思っていたら、『けしからん』という批判しか出てこない」と力説し、中国を画一的にとらえず、さまざまな事案ごとに戦略的に対処していく重要性を訴えました。

シンポジウムは2026年の北海道大学の創基150周年などを記念したもので、イギリスのロングボトム駐日大使と、JICA=国際協力機構の田中明彦理事長も基調講演しました。

「未来を支える人づくり」についての意見交換 左から田中明彦JICA理事長、垂秀夫前駐中国大使、イギリスのロングボトム駐日大使、寳金清博北大学長

 さらに、「未来を支える人づくり」をテーマに垂氏と、北海道大学の寳金清博学長も加えた4氏による意見交換も行われました。

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