「不安しかない…」止まらない物価高と変わらない現状に嘆くシングルマザー。過酷な夏が過ぎたとはいえ、ひとり親家庭が直面する現状は依然として苦しい。支援団体はさらなる行政支援の必要性を訴える。
止まらない物価高 去年に比べて「家計厳しい」98%に
「私は両親も亡くなっているので、自分が倒れたら子どもたちはどうなるのかといつも心配しています」
東海地方に住むシングルマザーのAさん(47)は、小3と小6の息子と3人で暮らしている。身近に手助けをしてくれる親族もなく、子どものことを考えれば考えるほど、不安な気持ちになるという。
Aさんは8年ほど前に離婚。自分の化粧品や衣服などの購入は極力控えているが、止まらない物価高に日々の生活は一層苦しくなっていると嘆く。
Aさん(47)
「スーパーでこれまで通り買い物をすると、これまでの2倍くらい高い印象です。『きょうはこれを我慢しよう』と買うのをやめることもあります。これから先のことを考えると頭抱えちゃいますね」
学校が夏休みの間は育ち盛り、食べ盛りの小学生の息子たちに満足に食べさせることができず、「本当につらかった」と振り返る。
子育て家庭の支援などを行うNPO法人「キッズドア」が、2024年6月に支援家庭を3309世帯対象に行ったアンケート調査(※1)によると、昨年同時期に比べて家計が「とても厳しくなった」「やや厳しくなった」と答えた人は合わせて98%にものぼる。
(※1)認定NPO法人キッズドア 2024 夏 子育て家庭アンケート調査 対象:キッズドア・ファミリーサポート登録世帯 3309世帯に配信、1821世帯が回答
苦しかった夏休み 体験格差に悩む親
さらに、この夏も“災害級”の暑さが続いたことが家計にダメージを与えた。
Aさん(47)
「夏休みは暑さも心配なので、子どもたちは基本的に家の中で過ごしていました。ほぼ24時間エアコンはつけっぱなしで電気代が心配です」
キッズドアが行った調査では、夏休みは「今よりも短い方がよい」と答えた人が47%でほぼ半数を占めた。その理由として、▼子どもがいることで生活費がかかる、▼子どもの昼食を準備する手間がかかる、▼夏休みに特別な体験をさせる経済的な余裕がないといった事情が挙げられたという。
キッズドア 渥美未零さん
「子どもは親をよくみていて、『もったいない』『電気代が…』といった言葉を覚えているものです。『親が仕事を休んだら収入が減ってしまう』からと、体調が悪くても言い出せない、くつがボロボロになって穴が空いていても言わなかった、という子どもの話を聞くこともあります。
一方で、仕事や家事などに追われる親御さんたちは子どもと過ごす時間がなかなか取れません。そうすると、子どもたちはどうしても家でゲームをしたりYouTubeを見て過ごしたりする時間も長くなってしまいます。この先を考えるとゲームやネットへの依存も心配です」
Aさんも、子どもに「色んな体験をさせてあげたい」と望んでいるが、今年も叶わなかったという。
Aさん(47)
「何より子どもに体験させてあげたい、子どもとの思い出を作りたいと思っています。8年ほど前に離婚して以降、旅行は本当に数年に1度になってしまいました」
政治には「期待していない」 ひとり親家庭への長期支援を具体的に
石破新総理となり、今月27日には3年ぶりの衆議院議員総選挙が行われる見通しだ。立憲民主党の代表選、自民党総裁選などもあり、政治のニュースが連日注目されているが、Aさんは政治に「期待していない」と嘆く。
Aさん(47)
「子どものいる家庭へのバラマキはやめてほしいです。その時はやっぱりありがたいんですけど、長期的な支援にはなっていないですし、ひとり親家庭への風当たりが強くなると感じています。長期的にみた支援、食料支援などを具体的に考えてほしいと思っています」
キッズドアの渥美さんも、行政の支援をもっと拡充する必要があると訴える。
キッズドア 渥美未零さん
「私たちが支援しているひとり親家庭の中には、生活保護を受けられるような生活水準の家庭も多くあります。しかし、大学進学といった子どもの将来のことや、学校で冷たい目を向けられないようにと考えて、仕事に、家事に、育児にと踏ん張っています。
DV被害にあって離婚した家庭や多子家庭など状況も様々ですし、行政の支援からこぼれ落ちてしまう家庭に対して、物資や情報、体験、就労といった面で支援していく必要があると感じています」
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