2018年に「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家・野﨑幸助さん(当時77)が殺害された事件で、殺人などの罪に問われた元妻・須藤早貴被告(28)の裁判。
“覚醒剤の密売人” だったとされる男性が出廷した第7回公判とは一転。第8回公判では、野﨑さんが亡くなる直前に3回食事を共にした知人女性への尋問が行われた。銀座の天ぷら屋などで野﨑さんが交わしたやり取りとは…。
高級ホテルで待ち合わせて銀座の天ぷら屋へ…
10月3日午前に行われた証人尋問は、証人がいる別室と法廷をオンラインでつなぐ「ビデオリンク方式」で行われた。証人は野﨑さんの知人女性である。
証人尋問でのやり取りや捜査段階の供述調書によれば、この女性は野﨑さん側から “背の高い女性が好きなおじさんと、一緒にランチに行ってほしい” というオファーを受け、野﨑さんと会うことになったという。
2018年4月27日、初対面の日。東京の高級ホテルのロビーで待ち合わせた2人は、関係者1人とともに、銀座の天ぷら屋に向かった。
(10月3日の証人尋問)
野﨑さんの知人女性
「あまり(深い)話をした記憶はなくて、ジョークというか、ただただほめられる、そんな感じでした」
「ビューティフルとか、英語をよく使うんだなという印象はありました」
被告に電話で“離婚したい” 一方で「北海道No.1」「月の半分は海外」自慢げに話す場面も…
野﨑さんはさらに、女性に対し “結婚してほしい” と述べたほか、その場で妻の須藤被告と電話で話し始めたという(ただし、この電話の発信者は須藤被告だった)。
知人女性「こんな初対面なのに(結婚してほしいと)言うんだなと思った記憶はあります」
「奥さんと電話していたのは覚えています」
検察官 「どんな内容だった?」
知人女性「“離婚したい”と言っていました」
検察官 「奥さんの反応は?」
知人女性「“またそんなこと言って”と言っていたので、野﨑さんは“離婚したい”ともすぐ言うんだなと思った記憶があります」
「野﨑さんはもう1回(須藤被告に)『お願いします』と言っていた記憶があります」
検察官 「電話の際、野﨑さんはどんな様子だった?」
知人女性「この電話の時は(真面目に)お願いしている感じでした」
一方で、弁護人が尋問で女性に確認したところによれば、野﨑さんは須藤被告について、“北海道No.1。月の半分を海外で過ごしている” と自慢もしていたという。相反する感情が共存していたのだろうか。
検察官が “あえて触れない” 所を、弁護人が丁寧に突いていく点が、今回の裁判の見どころでもある。
死亡3日前 知人女性に “6月に愛犬のお別れ会を開く” と説明
女性が野﨑さんと2回目に会ったのは同年5月7日。証人尋問や供述調書によれば、野﨑さんが「いま病院にいてこれから大手術がある」「余命1年と言われた」「これから目が見えなくなってしまうのに誰も来てくれない」などとウソをついて、女性を病院に呼び出し、また銀座の天ぷら屋に向かった。謝礼としてか、女性には10万円が支払われたという。
そして3回目に会ったのは、同年5月21日。野﨑さんが亡くなる3日前だ。この日も銀座の天ぷら屋での会食だったが、ここで野﨑さんは女性に “(5月6日に死んだ)愛犬のお別れ会がある。ビールを注いだり、仕事があるから来てほしい” “お別れ会は6月11日か12日、そのあたりで開く”と述べたという。
女性は渋ったというが、5月24日午前には野﨑さんの口座から女性の口座に、和歌山までの航空券代として20万円が振り込まれた。野﨑さんが亡くなった当日である。
検察側としては、この女性への尋問を通して、▽野﨑さんには須藤被告と別れたい意思があった ▽将来の予定も入れていた点などからも野﨑さんに自殺の兆候はなかった という点を明らかにする狙いがあったとみられる。
尋問の最後に、後者の点をめぐり裁判員の男性が質問した。
裁判員 「野﨑さんから『死にたい』といった発言を聞いたことはありますか?」
知人女性「ないです」
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。