石川県能登地方を襲った記録的な豪雨では、同県珠洲市にある揚げ浜式の塩作り施設も土砂崩れで泥が入り込んだ。塩作りは10月初旬ごろまでがシーズンで、今季の再開は難しい状況だ。能登半島地震から復旧した伝統産業は再び試練を迎えている。(井上靖史)

体験塩田や釜屋まで土砂が入り込んだ「道の駅すず塩田村」=石川県珠洲市清水町で

◆塩を作る施設にも泥が流入

 珠洲市清水町の「道の駅すず塩田村」。奥能登地方で受け継がれてきた揚げ浜式の塩作りの歴史が学べる塩の総合資料館「揚浜館」とともに、塩作りを体験できる体験塩田もある。能登半島地震を受けて休館したが、仮設住宅が整備されて職員が避難先から戻るなど条件が整えば再開時期を検討する予定だった。  道の駅の運営会社執行役員で駅長の神谷(かみたに)健司さん(65)によると、2面ある塩田には、どちらも流されてきた泥が覆いかぶさった。さらに濃縮した塩水をたくための釜屋にも泥が入り込んだという。塩田は固めた粘土の上に砂をまいて築かれており、かぶった土砂を取り除いて造り直す必要がある。釜の土砂も取り除かなければならない。

◆水道の復旧、再び見通しが立たず

 元日の能登半島地震では、隆起によって海水をくむ海岸線が50メートルほど遠くなったほか、施設の職員が避難中に亡くなった。それでも苦難を乗り越えて例年通り4月下旬に塩作りの神事を行った。「頑張り始めていると地元に感じてほしい」と少ない人員で塩作りもしてきたが、5カ月後に再び災禍に見舞われた。  神谷駅長によると、9月28日に電気の復旧は確認したが、豪雨前までは月末を見込んでいた水道の復旧は再び見通しが立たなくなった。神谷駅長は「雨が降れば土砂が流れてきて再び道がふさがれる可能性もある。どういう形で再開できるか考え始めたばかり」と話した。 

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