死者・行方不明者を5000人以上出した伊勢湾台風から、9月26日で65年です。
経験者が高齢化する中、伊勢湾台風をAI=人工知能で語り継ぐ取り組みが始まっています。

AIが学習したのは870の質問と400のデータ

プログラムを開発している名古屋の会社に、カメラが入りました。

(中部地域づくり協会 犬飼一博さん)
「経験や伝えたいことをずっと残して伝える。AIが使えるのではないかということで、AIで伊勢湾台風を伝承する企画を考えた」

使われていたのは、対話型人工知能AIのチャットGPTです。

中部地域づくり協会の依頼で半年前から開発が始まったプログラムは、チャットGPTの会話機能をつかって、伊勢湾台風経験者と話をしているような体験を目指しています。

(開発担当者)
「ここ数年のAIの発展が目覚ましくて、10年前にこんなことやるとは思っていなかった」

AIに学習させるのは、事前に集めた870項目の質問のほか、災害記録などをもとに作ったデータおよそ400項目です。そして…

「こんにちは。わしの名前は、伊勢湾太郎」

子どもたちがなじみやすいよう、15歳の時に被災した設定の「伊勢湾太郎」というキャラクターが質問に答えます。この日は初めて、試作品を小学生に体験してもらうことに。

弥富市立桜小学校がある地域も、伊勢湾台風で高潮で大きな被害があったところです。この日は全校児童362人を代表して、5人が質問します。果たして、うまく動くのでしょうか?

「分かりやすい」「本当に人みたいだった」

(児童)
「台風が来た時、どんな行動を取りましたか?」
(伊勢湾太郎)
「う~んそれはどうだったかな。台風来たときじゃな。わしら家族は、まず家の外の備えをしっかり行ったんじゃ。物が飛ばされんように方付けたり、とを打ち付けたりしてな…」
(児童)
「何に1番危険を感じましたか?」
(伊勢湾太郎)
「う~んそれはどうだったかな。一番危険を感じたのは、やはり猛烈な風と雨じゃ。名古屋市東区では屋根や窓に雨風が当たる音がすさまじく、家が壊れるんじゃないか、自分の命も危ないんじゃないかと本当に恐ろしかったんじゃ」

漢字の読み間違いや、不自然なアクセントはありましたが、スムーズに答えていきます。

(中部地域づくり協会 犬飼一博さん)
「本を読んで勉強するのと比べてどう?」

(小学生)
「こっち(AI)の方が分かりやすい」
「本当に人みたいだった」

このシステム、子どもたちの意見をもとにさらに改良されることになりました。

(中部地域づくり協会 犬飼一博さん)
「語りかけてそれに答えてもらうという体験をすることも勉強。私たちだけの気持ちで作ってもきっと子どもたちには伝わらない。」

愛知県と岐阜県の中高生ら約900人に、伊勢湾台風について尋ねたところ「知らなかった」と答えた生徒は52%にのぼった調査もあります。

65年前の伊勢湾台風が「遠い昔のこと」ではないと伝えるために…。最新技術を使った模索が続いています。

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