事件から58年。袴田巖さん、やり直しの裁判で無罪判決です。

午後2時から始まった袴田事件の再審判決公判は、まだ続いていますが、静岡地裁前では無罪の判決の一報が届いた瞬間、大きな歓声が沸きました。

記者
「無罪です、無罪判決が下されました。袴田巖さんに無罪判決が言い渡されました」

死刑判決から44年、いわゆる「袴田事件」はついに逆転無罪という展開を迎えました。

支援者
「もう率直にうれしいだけです」

袴田事件は1966年、静岡市清水区で、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして、袴田巖さんの死刑が確定したものです。

袴田さんは判決確定後も無実を訴え続け、去年3月、東京高裁が再審を認めました。

きょう午後2時から始まった再審の判決公判で静岡地裁は袴田さんに「無罪」判決を言い渡しました。

今回の判決で驚かされたのが捜査機関による証拠の捏造を認定した点です。

再審で最大の争点となっていたのが、事件から1年2か月後、現場近くのみそタンクから見つかった「5点の衣類」です。着衣についていた「赤い血痕」について、▼検察側はみそ漬けされても血痕の赤みが残る可能性はあるとして死刑を求刑した一方、▼弁護側は「捜査機関によってねつ造されたものだ」と無罪を主張していました。

きょうの判決では1年以上、みそ漬けにされた場合は血痕に赤みが残るとは認められないと指摘、捜査機関によって血痕をつけるなどの加工がされたとまで言及しました。

また、捜査機関による取り調べについても捏造であると認定しました。

警察の連日にわたる長時間の取り調べで、袴田さんは犯行を自白していました。

この取り調べについて、きょうの判決では袴田さんに精神的苦痛を与え、供述を強制する非人道的なもので実質的な捏造だとしています。

「巖さん、いいことがあったって今、連絡が来ました。いいことがあったそうですよ」
「さあて」

判決が出た直後、袴田さんは日課の散歩に出かけました。

袴田さんは長年にわたり拘置されたことで、精神的に不安定な状況が続いていて、きょうの詳しい判決内容は、現在、出廷している姉のひで子さんが直接、伝える予定です。

死刑事件の再審で無罪判決が言い渡された事件は今回で5件目になります。

今後、注目されるのが検察が控訴するかどうかです。

今回の判決では、争点に挙げられていた、いわゆる5点の衣類に加え、供述調書までも捜査機関による捏造と認定されました。

検察も警察もいわばメンツをつぶされた形となっていて、これまでの死刑事件の再審で控訴されたケースはありませんが、果たして今回、検察がどんな判断をするのか読めない展開です。

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