能登地方を襲った豪雨被害。今回の豪雨では、元日の地震で被災した人々が暮らす仮設住宅にも被害が出ました。仮設が被災したうえに、再建中の自宅に戻れるかどうかも分からない家族は「何も期待しない」と、今の思いを語りました。

25日も日の出とともに始まった行方不明者の捜索。住宅4棟が流された輪島市久手川町では…

記者
「今、ストレッチャーが運ばれてきました」

25日午前9時ごろ、土砂の中から女性を発見。68歳の井角祐子さんの死亡が確認されました。

井角さんの住宅のそばを流れていた塚田川。豪雨が襲った21日の様子です。

豪雨のあと、毎日、塚田川沿いを訪れ、妻を探し続けてきた夫の隆さん。濁流が自宅を襲ったのは、隆さんが川の氾濫に備え、車を高台に動かそうと祐子さんを残して家を出た時の出来事だったと言います。

祐子さんの夫 井角隆さん
「山の上の方から水がゴーッと来て、(妻と)別れ別れになって、祐子に『家に避難して』と私が言った。『2階に上がって』と言ったんですけど、今にして思えば2階に上がれという言葉が正解かどうか。山の方に逃げていたら、結果論ですけど助かってると思う」

その後、発見現場を訪れ、消防から説明を受けた隆さん。

祐子さんの夫 井角隆さん
「後悔先に立たずで…。地道に…生きていくしかないですね」

久手川町では中学3年の喜三翼音さんと、前川政二さん(80)が行方不明になっていて、懸命な捜索が続けられています。

また、25日午後3時すぎには塚田川の河口から1キロの海岸で男性一人が心肺停止の状態で発見され、その後、死亡が確認されました。今回の豪雨では、これまでに11人が亡くなっています。

「先行きが見えない」そんな思いをかかえる住民は少なくありません。

喜入友浩キャスター
「輪島市門前町の浦上地区です。川のすぐ近くに仮設住宅があるんですけれども、大雨の影響で大木や土砂が流れ込みました」

山崎恵美さん(43)が住んでいる仮設住宅は、床上まで浸水しました。

ボランティア
「今ですね、こんだけ泥がたまってます。水が、ここはかなりきてますよね。これから臭いが出てくるので」

ボランティアの手を借り、床下にたまった泥を乾かすためのサーキュレーターを設置しました。

ここでの生活が始まったのは今年3月から。3部屋の間取りに、夫と4人の子どもの6人で暮らしています。

仮設住宅が被災 山崎恵美さん
「子どもたちにしたらプライベートのカーテンで仕切られる自分の部屋が欲しいっていうのは思ってるらしくて、それも仕方ないね」

地震が起きる前は、自宅に両親と8人で住んでいました。誕生日には家族でケーキを囲み…、夏には庭で花火をしたり…。地震による被害を修復して、今年中には戻る準備を進めていたそうです。

しかし、能登を襲った今回の豪雨。自宅のすぐ近くを走る中屋トンネルでは… 

報告
「輪島市の中屋トンネル付近、国道249号線を撮影しています。辺り一帯に土砂崩れが起きています」 

道路の復旧も見通せない中、いまだ自宅の様子を見に行くことすらできていません。

喜入友浩キャスター
「Q.今後の見通しは」
仮設住宅が被災 山崎恵美さん
「何も期待しない。いつどうなるか分からないし、私らの願いは元通りで、家から何でもできるようになりたいんですけど、これだけ大きなことになってるから。どうしていけばいいか、私らもまだ何とも言えない。もう笑うしかないですよ。なぜ能登にこんな一年も経たず」

輪島市では、およそ10か所の仮設住宅が床上・床下浸水などの被害を受けました。輪島市内の仮設住宅の6割がハザードマップなどの浸水想定区域に該当しているのです。

ある理由で、仮設から自宅に通い続ける人も。

東真紀子さん(69)。地震で倒壊した自宅の跡地に、新たな家を建てているさなかでした。家の土台が流木や土砂に覆われ、親族ら総出で片付けをする中、出てきたのは…、娘の芳美さんの写真です。地震で命を落としました。 

地震で娘を亡くした 東真紀子さん
「10人ほど家族がいたんですけど、娘だけがいる場所が悪くて、家の梁(はり)が落ちてきて。とにかく家の犠牲になったから新しい家へ入れてあげたい」

娘の一周忌となる来年の元日までには、自宅を完成させたいと願っています。

喜入友浩キャスター
「Q.ここにもう一回、家を建てる」
地震で娘を亡くした 東真紀子さん
「その信念は失っていませんから。何が何でも。皆さん一生懸命やってくださっているし、建てるしかない。するしかないです。1か月ぐらい遅くなるんじゃないかと思いますが、こればっかりは誰のせいでもないから」

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