自宅に火を付けて全焼させたとして、現住建造物等放火の罪に問われた女。20年近くの間、浪費や不倫を繰り返し、そのたびに家族から𠮟責された女は「自分が生きていれば家族に迷惑をかけてしまう」との思いから自殺を図ったといいます。双極性障害や知的障害があったという女が裁判で語ったこととは。

被告人の量刑は?検察官による論告と弁護士よる弁論ー

第3回公判では、検察官による論告と弁護士よる弁論が行われました。

弁護側は公訴事実については争わないとし、争点は被告人の量刑となりました。

【検察官の論告】
検察官は、刑を決めるうえで考慮すべき事情として、

▽木造家屋である自宅でマットレスやソファに火を燃えうつらせ、炎を大きくした行為は危険で悪質であること
▽隣接する木造家屋にも延焼し、鎮火までに約3時間を要した大規模火災は近隣住民の生命や財産を脅かす危険な行為であること
▽1500万円(30年ローン)で購入した自宅を失った上、がれきの撤去に270万円のほか、延焼被害少なくとも約500万円など被害結果が重大であること
▽周囲を巻き込む身勝手な動機であること
▽被告人の精神障害の影響は乏しいこと

などを挙げました。

一方、被告人に有利な事情として、

▽夫が処罰を望んでいないこと
▽夫が近隣住民に賠償見込みであること
▽前科前歴がなく、自白し反省していること

などを挙げました。

これらの事情から、検察は被告人に対し懲役5年を求刑しました。

【弁護人の弁論】
弁護側は執行猶予付きの判決を求めました。

主な理由として
▽自殺のきっかけは家族関係にあり、原因は被告人のみにあることではないこと
▽犯行には衝動的にすぐ実行してしまう知的障害の影響が大きかったことなどから、放火に至るまでの経緯や動機について強く非難できないこと
▽今後は知的障害について周囲の理解が得られるほか、双極性障害の治療と知的障害の心理教育を受ける体制が整っているため、今後被告人が罪を犯すことはないこと
▽被告人の夫が処罰を望んでいないこと

などを挙げました。

また、被告人に有利な事情として、

▽自首していること
▽本人の思い、意志、努力ではどうにもならない知的障害や精神障害などが意思決定に大きく影響したこと
▽死者がいないこと

などを述べました。

最終陳述 被告人が最後に語ったいまの思いとはー

最後に証言台の前に立った被告人は、検察側、弁護側、裁判員や裁判官に向かって礼をしました。

裁判官「最後に言いたいことはありますか」

―私は死にたいと思って自宅に放火しました。近隣住民の方、家族に申し訳ない思いで、深く反省しています。燃えている自宅を見て、恐ろしかったです。二度とこういうことはしません。命が助かり、この命を大切に思いました。死ぬまで罪を償っていくものだと思います。

弁護士からも話があったように、自分のことを振り返り、今後どう生活していくのか。双極性障害と知的障害についても相談しながら自分が少しでも良い方向に向かうように自分も努力したいです。

事件によって家族はバラバラになりました。何とかして家族の絆、夫婦の絆を取り戻したいです。

生き残って、私にとってこれが最後のチャンスだと思いました。
地に足をつけて、少しでも人の役に立てるような人間になりたいです。
一日でも早く出所し、両親の生きている間に少しでも親孝行がしたいです。

裁判員の方には、忙しい中法廷に来ていただき、私の話を聞いていただき感謝しています。ありがとうございます。

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