異常な暑さの残暑が続いていますが、最近よく耳にするのが「海面水温の上昇」です。
様々な気象現象に影響を与えているといわれますが、もちろん海の中で暮らす魚たちもその影響を受けていて、各地で獲れる魚の種類も大きく変わり始めています。

山陰沿岸の海面水温の上昇はどの程度のものなのでしょうか。まず、鳥取県栽培漁業センターに話を聞きました。

鳥取県栽培漁業センター 志村健 室長
「(海面水温は)上がっています。鳥取県沿岸の海面水温をずっと測っているんですけど、こちらのグラフ、黄色が今年の1月から9月まで、赤色が去年、青色が一昨年の水温です。沿岸の水温ていうのは冬場の2~3月に一番冷たくなって、8月~9月にむかってどんどんと水温が上がっていきます。
今がちょうどピークになってまして、27.2度。平年と比べて1.4度高くなっています」

海面水温が上昇することで、山陰沿岸では獲れる魚に変化が起きていると言います。

鳥取県栽培漁業センター 志村健 室長
「様々な影響を与えていまして、ひとつは獲れる魚の種類が変わるという事、それと獲れる時期がずれてしまうということがあります」

北海道でサケやサンマが獲れなくなったり、逆に今まで獲れなかったブリが獲れるようになるなど、海水温の変化は日本周辺全域で影響を及ぼしています。
山陰も同様に…

鳥取県栽培漁業センター 志村健 室長
「1970年から80年代、まだ海の水温が低かった時代、沢山マイワシが取れた時代です。イカで言ったらヤリイカ。青森・北海道とかで沢山獲れるイカなんですけど、そういったイカも獲れていました。
90年代以降水温がポンっと上がってしまってからは、どちらかというと暖かい海を好む魚が獲れるようになりました。イカで言うとスルメイカ、ソデイカ、ソデイカなんかは、沖縄で産卵するイカですね。そういったものが獲れるようになってきました」

魚種は近年さらに変化しており、キジハタなどの高級魚も獲れるようになってきていると言います。

食卓にも影響する魚種の変化。境港市の水産加工メーカーは…

小倉水産食品 小倉大造 専務
「お寿司屋さんとか飲食店さんが欲しがっている(大きい)サイズのアジ・サバ・イワシとかっていうのは実はすごく少ない。そういう傾向にあります」

他にもハタハタやホタルイカなども漁獲量が減少していると言います。
一方で…。

小倉水産食品 小倉大造 専務
「境港の底引き網漁船でアンコウとかタラが良く獲れるようになってまして、獲れたは良いけどどこに売れば良いんだろう、どのように加工すれば良いんだろうっていうところで今メーカーさん達は頭を悩ませているところかなと思います」

こうした獲れる魚の量や種類の変化に対し、全国に500店舗以上をかまえる回転ずしチェーン店、「くら寿司」では、ある取り組みを行っています。

くら寿司 広報宣伝・IR本部 広報部 小坂博之マネージャー
「地魚地食の取り組みをさせていただいてまして、簡単に言うと地産地消という形なんですけども、関西にセントラルキッチンで天然魚を加工するノウハウも持ってますので、そういったノウハウを共有させていただきまして、加工頂いてそれを加工するだけでなくて、地域の店舗で販売するっていうことで」

その地域で獲れる魚に応じた加工、販売をすることで、地域の漁業者には販路の確保を、消費者には新たな魚の魅力を提供できるといいます。

海面水温上昇に伴う海の生態系の変化。
慣れ親しんだ魚が縁遠くなってしまうのは残念ですが、一方で、新しく獲れるようになった魚を美味しく食べようという姿勢も、私たちに求められているのかもしれません。

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