20人が死亡、6人が行方不明となっている観光船「KAZUⅠ」の事故から2年5か月。
9月18日、船の運航会社社長、桂田精一容疑者が逮捕されました。
HBCのカメラは、18日の桂田容疑者の姿を捉えていました。
18日午前11時すぎ、網走海上保安署に入った1台のワンボックスカー。
車から降りてきた男は、知床遊覧船の桂田精一容疑者です。
白い半袖シャツに身を包み、足早に建物の中へ入っていきました。
このとき、すでに逮捕され「容疑者」となっていました。
2022年4月、知床半島沖で起きた観光船「KAZUⅠ」の事故。20人が帰らぬ人となり、今も6人が行方不明のままです。
国の運輸安全委員会は、船のハッチのふたが完全に閉まらない状態で、海水が船の内部に流れ込み沈没したと推定。
海上保安庁が捜査を続けていました。
そして、18日…。
第1管区海上保安本部・藤田望警備救難部長(18日の会見)
「被疑者桂田精一を業務上過失往来危険、および業務上過失致死の疑いで通常逮捕した」
桂田容疑者は、観光船「KAZUⅠ」を運航する際、運航管理者として安全を確保すべき義務を怠り、船を沈没させて乗客乗員を死亡させた疑いが持たれています。
海保は記者会見で、当時の状況について、ハッチから入った水が倉庫、そして機関室にまで及び、沈没に至ったと説明しました。
一方、桂田容疑者が容疑を認めているかどうかについて、「回答を差し控える」としました。
責任の追及は、ついに本人への強制捜査という形で捜査機関に委ねられることになりました。
捜査にあたる、小樽市の第1管区海上保安本部から中継です。
桂田容疑者を逮捕した第1管区海上保安本部が入る建物の前に来ています。
こちらでは18日午後2時ごろから、捜査を担当した刑事課長ら4人が会見を開き、経緯を説明しました。
会見の説明自体は10分ほどで終わったんですが、記者との質疑応答の時間を含めますと約1時間半にも及びました。
記者から質問が集中したのは、桂田容疑者が問われている「過失」の中身についてと、なぜ2年5か月も経った今、逮捕に至ったのかについてです。
質疑応答の中で刑事課長らは、桂田容疑者の過失について「乗客乗員の安全を確保するため、発航中止または航行継続を中止する義務があったがこれを怠った」と説明しました。
また、会見ではハッチからの浸水で沈没に至ったという説明がありましたが、ハッチのふたの不具合を放置したことや、運航管理者にもかかわらず事故当日に事務所を不在にし、連絡がとれない状態だったことなど、具体的にどの行動が過失に含まれるのかについては、「回答を控える」としました。
また、なぜこのタイミングで逮捕かについても多くの質問がありましたが、1管側はこれまでも桂田容疑者に対する任意での聴取を行っていたことを認めた上で、「証拠隠滅の可能性が排除できないことから逮捕に至った」とだけ説明しました。
第1管区海上保安本部は、今後も真相究明に努め、乗客家族のために、依然行方が分からない6人の捜索にも全力を尽くすとしています。
今回の突然の逮捕、乗客の捜索に関わった人や家族は、どう受け止めたのでしょうか。
北海道羅臼町の漁師、櫻井憲二さんは、18日朝、遺族から逮捕のしらせを受けました。
行方不明者の捜索に関わった櫻井憲二さん
「自分の中で逮捕は難しいと思ってたんで、それだけの時間をかけて逮捕までこぎつけてくれた海保には本当に感謝しかないです」
ボランティアで行方不明者の捜索を続けてきた櫻井さん。
これまでにKAZUⅠの船長だった豊田徳幸さんと乗客の女性の遺骨を見つけています。
行方不明者の捜索に関わった櫻井憲二さん
「自分たちは(逮捕の)一報を待つだけでしたけど、家族は本当につらい2年だったと思います」
行方不明者の捜索に関わった櫻井憲二さん
「家族の方々にはまだまだこれから先、裁判とかいろいろあるんで大変だとは思いますけれども、どうか…心の安らぎを得てほしいなと思います」
桂田容疑者については、責任の大きさを自覚してほしいと話します。
行方不明者の捜索に関わった櫻井憲二さん
「刑が確定するまで彼のことですから争うでしょうから…。自分の会社が、自分が代表者として何をしたのかをよく理解して反省してほしい」
2023年まで斜里町長を務めていた馬場隆さんです。発生直後から事故対応にあたりました。
電話インタビューに応える 馬場隆 元斜里町長
「(遺族は)ここまできたんだという感慨深さもあったんではないかなと…。(観光船は)知床の観光に寄与する事業。(桂田容疑者は)経営者として事業主として、やるべきことをやってなかったのは、私の目から見れば明らかだった」
事故で命を落とした橳島優さんの両親は、桂田容疑者の逮捕を受けて、弁護士を通じてコメントを出しました。
「逮捕の一報を聞いて『やっとこの日が来たんだな』と思いました。一部では立件されないかもしれないという情報もあり、心配していましたが、今は少し安心しています。桂田(容疑者)には潔く自分の罪を認めて欲しいですし、出来る限り重い処罰がくだされる事を望みます。裁判が早く終わり、一日でも早く息子を感じながら、家族全員で前に進みたいと思います」
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