人命に直結する土砂災害の対策として砂防事業が各地で行われていますが、あまり知られていない実情があります。今回、大学生を対象に砂防の現場を視察するプログラムが組まれ、未来の防災を担う人材を育てる動きが活発になっています。


「横ボーリング工になります。穴をあけた管を入れて地下水を排除することを目的としています」

8月、東海道五十三次で有名な静岡県清水区由比の薩た峠付近を訪れていたのは4人の大学生です。


「水はどこに溜まっているというのは地形を見て判断するのか」

「基本は地形とボーリング調査や地質調査」

4人が参加したのは土砂災害対策の最前線を学ぶ「キャンプ砂防」。国が企画した5日間のプログラムが各地で展開され、富士砂防事務所では由比の地すべり対策の現場を公開しました。


「東名高速道路、国道1号、東海道線が平行で走っている区間になりまして、地すべりが起きますと、大動脈が影響を受けるので、地すべり対策事業を進めている」

この場所は50年前の七夕豪雨の際に土石流や地すべりが発生し、民家や当時の国鉄、国道が土砂に埋まりました。

同じ被害を繰り返さないよう富士砂防事務所では428億円をかけて対策事業を進めていて、2030年度までに完成する予定です。この一大事業を学生に見てもらうのには理由がありました。


「近年、雨の降り方が変化してきているということもありまして、全国的に土砂災害の発生する頻度が大きくなってきております」

温暖化の影響も相まって、近年激しさを増す豪雨。過疎化や高齢化に伴う耕作放棄地の増加など社会的な要因も重なり、全国的に土砂災害のリスクが高まっていると言います。

砂防の役割を知って防災を考えるきっかけにしてほしい。将来、地域を守る主役となる若者へのアプローチが重要になっているのです。

身近なところにも砂防事業が役立っています。学生たちが訪れたのは富士山のふもとです。


「うわ、急に。すごい」

「土石流が流れたときはこんな感じになるよという」

この観測所で捉えた土石流の様子です。日本最大級の崩壊地として知られる富士山の大沢崩れから土砂が流れ出しました。


「山の規模というか土砂の流出の規模もそれほどでかいものなんだなと痛感させられました」

富士山はその美しさとは対照的に脆弱な火山地質の崩壊によって土砂災害の猛威を振るうことがあるため、現場では50年以上に渡って「大沢川遊砂地」と呼ばれる砂防施設の整備をしています。2021年には3回の土石流を捉え、被害を防いだ実績もあります。


「今までに経験のないような豪雨も多いので、最悪を想定して工事をしているのが伝わってきたので今後もそういう対策をしていくのが大事なんだと感じました」


「名勝と言われている場所でも災害があるんだ。今後はこういう砂防に携わりながら守っていきたいと感じました」

災害の過去を知り対策の現場を体感することが若い世代への刺激になったようです。


「砂防で言えば、なかなか一般の方には知られていない部分もありますので、こういった機会にこんなところで事業をしているんだよと知っていただければと。興味を持っていただいて、我々が行っている建設事業だとか防災の関係の事業に将来携わっていただけるようであれば幸いかと思っております」

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