千葉市議会は17日、請願者が希望していない請願書を作って議会に出したとして、「日本維新の会・無所属の会」の桜井崇議員(58)=無所属=と大平真弘議員(37)=維新=に対する辞職勧告決議案を全会一致で可決した。同会派の守屋聡幹事長(61)=維新=は可決後の本会議で、2氏の「自作自演」だったとし「市民の権利を冒瀆(ぼうとく)し、痛恨の極み」と謝罪した。(平野梓)

◆会派を離脱、議員辞職はせず

 辞職勧告を受け、2氏は会派を離脱。決議に法的拘束力はなく、議員を続投する意向を示した。

報道陣の取材に応じた桜井崇議員㊧と大平真弘議員=いずれも17日、千葉市議会で

 請願は、自民党など複数の市議が市提出の議案に賛成を表明する際の原稿案を市側が作って提供していたとする朝日新聞報道を受け、提供をやめるよう求めた内容。請願者として同市在住の飯岡章弘さん(89)の名が記されていた。  しかし、請願書に記載された飯岡さんの住所、氏名は桜井氏が書き込み、文案は大平氏が作っていた。別の市議が飯岡さんに問い合わせ、請願していないことが発覚。請願は9日の議会運営委員会で不採択となり、13日に無効となった。  決議では、2氏の行為について「請願制度に対して社会の信頼を失墜させ、地方自治の運営を揺るがしかねない悪質極まりないもの」と批判。採決では、2氏に加えて同じ会派の3議員計5人が退席し、議長を除く全議員44人が賛成した。

◆「行き違い」「了解を得たものと…」釈明

 可決後、桜井氏は「請願者とコミュニケーションの行き違いがあった。内容は民意を反映したもので、自作自演には当たらない」と釈明。大平氏は「請願者とのやりとりは桜井議員に一任していた。内容は請願者の了解を得たものだと認識していた」と述べた。  石川弘議長(70)は、守屋氏と、請願書に紹介議員として名を連ねた別の2市議を口頭で厳重注意した。  神谷俊一市長は「市議が、法令に基づく請願の手続きで不正を行ったことは制度の根幹を揺るがし、政治への信頼を失わせるもので、大変残念」とするコメントを出した。  ◇   ◇

◆請願「身に覚えない」、内容も「初めて聞いたよ」

 請願者として名前を使われた飯岡章弘さんは17日、本紙の取材に応じ、請願について身に覚えがないとして「何も知らない」と憤った。内容について記者が質問すると、「いま、初めて聞いたよ」と興味がない様子だった。

千葉市議会に提出された請願書の写し。代表者に飯岡さんの名前が手書きされている=17日、千葉市役所で(一部画像処理)

 請願書に自分の名前が使われていることは、9日に知り合いの市議から見せられて知った。「『こんな請願が来ているが、君のなのか』と見せられた。見たことも、書いたこともない。請願者の名前もぐちゃぐちゃ書き直されていて、これはひどいな、と思った」  桜井崇議員とは3年ほど前からの付き合いという。今回の請願とは別に、飯岡さんは、地元の道路の通行を妨げる樹木を伐採するよう求める請願を出すために桜井氏に依頼し、署名の記載も許可していた。「あくまでそっち(別の案件)の請願だと思っていた。ほかには考えられなかったから」と述べた。(平野梓) 

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