まだまだ残暑が続く中、耳をすませばセミの声が聞こえることもありますよね。このセミの分布を調べることで、「環境の変化」が分かるそうなんです。

セミの生態に詳しい熊本博物館の清水学芸員に聞きました。(取材:平岡夏希アナウンサー)(2024年9月5日放送)

実は1週間以上生きるセミの成虫 

熊本博物館 清水稔 学芸員「環境の変化を見るうえでは、割といい生き物といえます」

セミの成虫の寿命は1週間ぐらい…と聞いたという方も多いと思いますが、清水学芸員によりますと、外的要因を受けなければ1か月程度生きると言います。

セミは種類によって好む環境が違うため、どこで・どのセミが多く生息しているかの変化を見ることで、環境の変化が分かるということです。

では、セミはどんな場所を好むのでしょうか?

「都市部」のセミたち

例えば、都市部を好むアブラゼミとクマゼミ。

その中でもアブラゼミが多ければ「まだ木々が残っている」ということが、乾いた土地が好きなクマゼミが増えれば「周辺の開発が進んだ」ということが分かるといいます。

熊本市ではクマゼミが増えています。

熊本博物館 清水稔 学芸員「木がうっそうと茂っているようなところが開墾されて公園になって、風通しが良くなってくると乾燥する。すると、それまで多かったアブラゼミが減ってクマゼミが増える」

調査は市民参加型

熊本市は2019年から毎年「セミ調査」を行っています。市民参加型で、いつ・どこで・どの種類のセミをとったかを調査表に記入し、メールや市のアンケートページで提出する必要があります。

今年(2024年)の調査は、9月6日までにとった個体が調査対象です。

去年は約850件、6700匹の調査報告があり、熊本市の担当者は「市内には8種類のセミが生息していることが分かった」と分析しています。

(クマゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミ、ヒグラシ、ヒメハルゼミ、ミンミンゼミ、ハルゼミ)

後生川凜アナウンサー「つまり、8通りの自然環境が見えてくるということでしょうか?」 

そうなんです。好みの環境が異なる8種類のセミの生息状況を10年継続して調べることで、熊本市の自然環境の変化が分かると期待しています。

そして…今年9月時点のセミを観察すると、早くもこの夏の「ある変化」が見えてきました。

成虫が見つからない!?

9月4日、熊本城二の丸広場でセミを探すと…

平岡アナ「抜け殻ありました、ここにもあった」

セミの抜け殻は多く見られましたが、セミの成虫はなかなか見つかりません。

それもそのはず。20年以上セミの声を記録している清水学芸員はこう指摘します。

清水学芸員「アブラゼミは、去年は9月30日が“鳴き終わり”だったんですけれども、今年は9月1日。9月の頭にアブラゼミが鳴き終わっているというのは、これまでないですね

8月の終わりに熊本に接近した台風などの影響以外にも、要因があるようです。

清水学芸員「この暑さが問題なのかなと…」

この夏、観測史上最も暑かった熊本市。猛暑日も過去最多を更新しています。あまりの暑さで、セミたちも力尽きたようです。

清水学芸員「夏に元気に鳴いているから高温に強いかというと、そうでもなくて。昆虫たちもかなり疲弊しているのではないかと予想されます」

後生川アナ「今年の台風や暑さが、すぐに今年のセミに影響するんですね。意外と早いというか…」

環境の変化で増減するセミの生態。熊本市の担当者は、セミ調査を通して「データを蓄積し、環境保護に生かしたい」と話していました。

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