8月の台風10号の影響で、大分県国東市の安岐ダムでは、水位が急激に上昇したため、緊急放流に踏み切りました。この時、県から国東市などへの事前通知が規則よりも遅れる事態になりました。

佐藤樹一郎知事は3日の定例会見で、国東市に謝罪したことを明らかにしました。

佐藤樹一郎知事:
「3時間前に国東市をはじめ、関係機関に連絡するというのが結果として遅れてしまった。マニュアル通り対応できるようにしていくというのが今回の台風の1つの大きな課題です」

安岐ダム

県のダム操作規則では、緊急放流の「3時間前」と「1時間前」に、ダム下流の自治体へ通知することになっています。

しかし、台風に見舞われた8月29日。正午時点では、緊急放流は必要ない状況でしたが、大雨の影響で予測水位が急激に上昇。県は午後3時に緊急放流ラインを超えるとして、国東市に午後1時半に通知を出しました。

さらに午後2時には30分後に緊急放流ラインに到達するとして、県は2回目の通知を出し、午後2時半に前倒しして緊急放流を実施しました。

つまり、今回の緊急放流の通知は、1回目が「3時間前」ではなく『1時間半前』に。2回目は「1時間前」ではなく『30分前』でした。

なぜ遅れが出たのか――県は当初の予想を超える雨量が原因だと説明します。

県河川課 山口政義防災調整監

県河川課 山口政義防災調整監:
「今後1時間の雨量が33ミリと予想していたのが、実際は43ミリ。予測以上に降雨量が増えた関係で貯水の水位も急激に上昇した」

県によりますと、雨のピーク時には毎秒325トンの水がダムに流入し、運用上想定されている最大の210トンを大幅に上回りました。

県河川課 山口政義防災調整監:
「限界を超えるとダムが決壊して下流に甚大な被害を及ぼすおそれがあるので、今回緊急放流を行った」

ただ、国東市では通知の遅れに伴う影響は少なかったといいます。

国東市危機管理室 元永和行室長:
「通知があると市内全域で防災行政無線で市民への周知を努める。事前に河川の状況を複数人で見ていた中だったので、ダムの放流も合わせて対応できたので影響はなかった」

緊急放流で甚大な被害が出たのが2018年の愛媛県です。2つのダムで緊急放流が行われ、逃げ遅れた男女5人が亡くなりました。

今回、安岐ダムの下流域にある屋那瀬地区では住宅の浸水被害が発生。県は現在、緊急放流の影響について調査中としていますが、地元住民からは、通知の遅れの改善を求める声が聞かれました。

屋那瀬地区

(住民)「緊急放流が早く分かるといいですね」「雨がここだけじゃなくて他のところもすごかった。ダムだけのせいとは思えない」「早めの放流ができなかったのか。もう放流の仕方だけです。それだけ考えてやっていただきたい」

県は今後、緊急放流の事前通知を確実に行うため、雨量の予測精度の向上に取り組みます。

県河川課 山口政義防災調整監:
「急激な水位上昇で結果的に事前通知が遅れることになったので、改善策としてよりよい高予測データの入手、高精度の洪水予測の改善を図っていきたい」

緊急放流の事前通知の遅れは最悪の場合、人命が失われる事態につながるため、行政は激甚化する災害に対応しながら規則を守ることが求められています。

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