「ようやくこの日が来た」「早く解決してほしかった」。旧優生保護法下の強制不妊手術を巡る訴訟で、原告側と政府は13日、手術を受けた本人に国が1500万円の慰謝料を支払うことを柱とした和解の合意書に調印した。初提訴から約6年7カ月。調印後、ほっとした表情を浮かべた原告ら。長い時間がかかったことへの無念さから、そこに笑顔はなかった。  「今日の状況を見ていただきたかった。国がちょっと遅かった」。名古屋高裁で係争中の原告で、聴覚障害のある尾上敬子さん(74)は手話通訳を介し、提訴後に亡くなり、この日を迎えられなかった各地の原告6人の無念を思いやった。原告以外の全ての被害者の救済は今後具体化することになり「声を上げていない方は、これを機会に声を上げていただきたい」と呼びかけた。

調印式後の記者会見で思いを語る、尾上敬子さん(右から2人目)と夫一孝さん(同3人目)ら=13日、東京都千代田区で(井上真典撮影)

 同じく聴覚障害のある夫の一孝さん(77)は「ようやくこの日が来たと、うれしく思っております」と手話で伝えたが、表情は硬いまま。夫婦を支援してきた「優生保護法裁判愛知原告を支援する会」の中嶋宇月共同代表は「これを機に、国はすべてを解決してほしい」と期待する。  14歳の時、仙台市内の児童福祉施設で手術を強制され、7月の最高裁判決で勝訴が確定した東京訴訟の北三郎さん(81)=仮名=も調印式に出席。会見で「国が謝ってくれて、うれしかったけれども、悔しい思いが消えることはありません」と話した。(井上真典) 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。