山梨県の長崎知事に関する現金1182万円の不記載問題で、東京地検が刑事告発を嫌疑不十分で不起訴として、12日で2週間です。

今回は元東京地検特捜部副部長で元衆議院議員でもある、いわば検察と政治のスペシャリストの若狭勝弁護士にインタビュー取材を行いました。

検察の判断、そして新たに明らかとなった知事自らが現金を受け取っていた事実に対してその見解は?(前・後編の前編)



元東京地検特捜部副部長 元衆議院議員 若狭勝弁護士:
「証拠が十分でなかったということに過ぎない。それで不起訴としたということに過ぎない」

元東京地検特捜部副部長で元衆議院議員、検察と政治の両方の経験を持つ若狭勝弁護士。

まず、今回の長崎知事への刑事告発で東京地検が出した「嫌疑不十分での不起訴」の意味についてきくと…

元東京地検特捜部副部長 元衆議院議員 若狭勝弁護士:
「(検察が)不起訴にする場合というのは、疑いとすれば政治資金規正法違反がありうるんだけれど」
「あくまで起訴して処罰するに足りる証拠が十分でなかったということであって、それでやむなく不起訴にせざるを得なかったというパターンであることが多い」

長崎知事の会見 今年1月20日

長崎知事の資金管理団体が、2019年に自民党二階派からの現金1182万円を政治資金収支報告書に記載せずに失念したとして、およそ5年間事務所の金庫に保管していた今回の問題。

長崎知事は不起訴処分から1週間後の知事会見で県民からの反応について。



山梨県 長崎幸太郎知事:
「お話いただく方は 良かったねと、嫌疑が晴れてよかったですねということだと思います」

元東京地検特捜部副部長 元衆議院議員 若狭勝弁護士:
「不起訴の中でも『嫌疑不十分』と『嫌疑なし』の場合があるんですが、『嫌疑なし』というと真っ白、無罪みたいなものですが」
「『嫌疑不十分』という不起訴の場合は、むしろ嫌疑は依然として残っているけれど、検察として起訴するに足りる証拠が十分得られなかったということの結論を言っているに過ぎない」



元東京地検特捜部副部長 元衆議院議員 若狭勝弁護士:
「決して嫌疑が晴れたとか疑いが晴れたということになるわけではないと思います」

そのうえで「嫌疑不十分の不起訴」は検察当局からのお墨付きではないとも指摘しています。

元東京地検特捜部副部長 元衆議院議員 若狭勝弁護士:
「よく政治家は検察が不起訴にすると、それをもっていわゆる『お墨付き』、政治資金規正法違反などの犯罪とはとらえられなかったという、検察当局のお墨付きを得たという形でよく使うんですよね。不起訴判断に関して」
「しかし『嫌疑不十分』というのは、あくまで疑わしいということを検察も認めているわけですから、決してそれで真っ白、無罪、なんら問題なかったということには決してならないと理解すべきだと思っています」

長崎知事の会見 今年8月29日

また長崎知事は8月29日、東京地検の判断を受けて改めて会見し、これまで刑事告発を理由に説明を避けていた現金授受の詳細を初めて明らかにしました。



山梨県 長崎幸太郎知事:
「(当時の)二階派事務局長から(知事に)紙袋で渡されたものであります。事務局長からは『処理方法については、これからの指示を待ってください』と指示があった」
「場合によっては二階派の状況で(現金を)返してくれないかとか、言われることはありうると考えていたので、組織としての二階派の意思が示されるまでは、ちょっと用心すべきかなと思っていました」



これに対して、自らもかつて自民党に所属し国会議員も経験した若狭弁護士は、政治の世界の実情を踏まえながらも苦言を呈しています。

元東京地検特捜部副部長 元衆議院議員 若狭勝弁護士:
「政治家がいろんなところからお金を受け取るのは一般の人が思っている以上にかなり多い」
「ただいろんな弁解が出た場合に、本当は疑われる犯罪がそのようなやり取りだったとしても、いざ起訴できるところまで証拠が集まるかというと、別の次元の問題が発生しますけれど」
「(政治家は)当時、処理がわからないお金を受け取りましたということ自体、政治責任としてはかなり問題がある」

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