台風10号の接近で各地で土砂崩れが相次ぐ中、8月に愛知県蒲郡市で家族5人が巻き込まれた土砂崩れについて専門家が調査。「気になることがある」と指摘しました。

8月27日、愛知県蒲郡市で家族5人が暮らす住宅が巻き込まれ、3人が死亡しました。

そして9月8日、その現場を独自に調査しようと訪れたのは、東京大学の蔵治光一郎教授。「森と水と人の関係」を研究しています。

気になるというのがこの場所。

航空写真で2014年3月の画像と、その1年前の画像を比べると一部分で木がなくなっているのです。

木を切ったエリアの中に今回の土砂崩れの起点があった

(東京大学 蔵治光一郎 教授)
「その跡地が今どうなっているのかと、跡地と崩れのてっぺんとの位置関係を見たい」

蔵治教授と共に山に分け入り、しばらくすると…。

(東京大学 蔵治光一郎 教授)
「あったあった。これが豊川用水の施設。写真を見る限り、ここの木を全部切っている。(今)生えている竹は、その後に生えたもの。昔から植林した木は1本もない」

近くには気になる切り株も!

(東京大学 蔵治光一郎 教授)
「腐っているし、穴が開いている。大体(切ってから)10~20年経つと、腐って空洞になる。雨がここから入って他よりも水が多く染み込んだ可能性がある」

木を切ったエリアの中に今回の土砂崩れの起点がありました。

(東京大学 蔵治光一郎 教授)
「これがまさに(土砂崩れの)一番上。大雨が降ると、ここの中に水が染み込んで全体的に湿っていく。水が流れやすい所があると、そこに(水が)集中するので、ある時ずるっと滑る」

木の伐採が土砂崩れの一因になった?

豊川用水を所有するのは水資源機構。

この場所は2013年8月から2014年5月にかけて豊川用水を供給する水管の入れ替え工事などが行われ、その際に木を必要な範囲で伐採したということです。

蔵治教授は工事に伴い、周辺一帯の木を全て切る「皆伐(かいばつ)」と土砂崩れとの関連を指摘します。

(東京大学 蔵治光一郎 教授)
「皆伐後10~20年の間が一番崩れやすいと研究で明らかに。ここは皆伐したのが約10年前のようなので、ちょうど危ない時期に差しかかったところだったのでは」

蔵治教授は木の伐採が一因と言われている土砂崩れは4年前にもあったと話します。

死者・行方不明者69人の熊本豪雨災害で、土砂崩れが起きた山は、重機を入れるために木を切り倒して作られた道が土砂崩れの起点の一つになっていました。

(東京大学 蔵治光一郎 教授)
「ここは運悪く皆伐の跡地で木がない。木の部分の保水力がない。一気に水が増水した」

蔵治教授「皆伐されたエリアとの一致は偶然ではないんだろう」

では、蒲郡市の土砂崩れ現場から見えてきたことは?

(東京大学 蔵治光一郎 教授)
「崩れた一番上が皆伐されたエリアと一致しているのは偶然ではないんだろう。それが下まで全部押し流すほどの規模になったところまでは、よく分からなかった」

蔵治教授は伐採後の「森の管理」が大切だと話します。

(東京大学 蔵治光一郎 教授)
「昔は人間が住む所に近い山は『里山的な管理』といって、人間がしょっちゅう山に入って管理をしていた。管理をやめた結果、木が好き勝手に生え放題になったり、竹が侵入してきたりといった問題がどこでも起きている」

「今回のような台風や線状降水帯が来たら、東海地方どこでも崖のすぐ下に住んでいる人は、勾配がどうであろうと警戒した方が良い」

水資源機構は「今回の土砂崩れとの関連性は分からない。工事が2014年に完了してから現在まで特に異常はなかった」としています。

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