能登半島地震から8か月。復旧に向けてはまだまだ道半ばで、ボランティアの力が欠かせません。

そこで「被災地の力になりたい」と願う学生に、交通費や宿泊場所を提供することで復興の後押しをする取り組みが始まっていて、静岡の学生も大きな役割を担っています。

<被災した 中濵英隆さん>
「向こうの部屋のものは全部持って下りてください」

2024年1月1日の揺れで最大震度7を観測した石川県輪島市。建物被害は石川県内最大の2万棟以上を数えます。

静岡大学の竹下琴里さん(大学院生:28)は、人生で初めて被災地でのボランティア活動に参加しました。

<静岡大学 竹下琴里さん>
「思い出がこんなにあるものを仕分けて運んでいってほしいとおっしゃる姿が胸がつらいなと。力になれるように頑張りたいと思います」

地震によって家ごと傾いてしまった住宅。3階から1階に荷物を運ぶのも大変な力仕事です。

<学生たち>
「ちょっとずつ行きましょうか、せーの」

<被災した 中濵英隆さん>
「これはできんわって言って。年寄り2人じゃ絶対無理やから。ちょっとスピードあるね、助かります本当に」

<学生たち>
「手を合わせてください。今日会えたことに感謝していただきます!」

アクセスが良いとは言えない能登半島に学生がボランティアとして参加できているのは「ユース災害ボランティア基金」という仕組みを活用したからです。

企業などからの寄付や助成金を活用して、能登半島までの交通費の補助や宿泊場所の確保のほか活動場所へのバス移動など、見知らぬ土地で不安の多い学生たちをサポートします。

3泊4日のプログラムを1セットとして学生の夏休み期間に全国から合わせて50人が被災地に駆けつけました。基金を設立したのは被災地でのボランティア経験のある静大の卒業生でした。

<BOSAI Edulab 上田啓瑚理事長>
「現地に行きたいけれどもすぐに現地に行けないという課題がありました。理由としては交通費がなかなかすぐに集められなかったり、宿はどうしようかとか、全国の学生にも同様の課題があることが分かりまして、現地に学生をすぐに届けられるような仕組みを作っていけないかというところで実現できた」

竹下さんには被災地の力になりたい理由がありました。

<静岡大学 竹下琴里さん>
「私はボランティアを受けた経験があってお弁当をもらったり掃除に来てもらったことをよく覚えていて」

2000年に発生した東海豪雨。愛知県名古屋市は堤防の決壊などで2万棟以上が床上浸水となり、竹下さんの自宅も2階まで浸水しました。

<静岡大学 竹下琴里さん>
「自分が受けてきたことをどこかでお返しというか、どこかで役立てればと思って」

このプログラムでボランティアに参加するには宿題があります。

<和田啓記者>
「静岡大学の研究室です。今まさに能登半島地震のボランティアに向けて事前学習を進めています」

<感染対策の専門家 後藤潤子さん>
「被災地に出向く前に麻疹、風疹、破傷風など必要に応じてワクチン接種をすることも自分や被災者を守るための行動です」

学生たちは出発前に防災の専門家の動画をWEBで視聴します。認定証をもらうことで知識やマナーを身につけた質の高い人材を被災地に送り込むのです。

<静岡大学 藤井基貴准教授>
「1回行って来た学生は次は即戦力。そういう人たちが増えていくのは社会としては踏ん張る力が持てる社会になるんじゃないかなと」

<静岡大学 永嶋真人さん>
「1回まとめて休憩した方が…」

この日の輪島市は今季の最高気温(35.8℃)を記録。リーダーの竹下さんは休憩を呼び掛ける必要がありましたが、活動を始めてから1時間半が経っていました。

<静岡大学 竹下琴里さん>
「休憩してと言われてたのに黙々とやってしまって。すみません、反省しています」

被災者を思うあまり力が入り過ぎましたが今度はタイマーをかけて休憩をとることにしました。

<愛知県から 参加した大学生>
Q. 3人でやりましたけどチームワークが2、3時間で良くなりましたね?
「コミュニケーションが結構とれたので、初めて今日会ったんですけど、いい動きができてたかなと思います」

能登半島地震から8か月。いまだに避難所や市外で生活する人が多く、家の片付けが進んでいない被災者もいます。

<静岡大学 竹下琴里さん>
「事前学習でも習ったんですけど『動ける体が一番の防災グッズだ』という言葉がありまして、私たちは若くてどこでも動けるしどこでもやりますと言って重いものでも運べる。気軽にこういう経験したよこういうことやってきたよと話して、また次の人がすぐに活動に参加できるような循環が成り立って行けばいいなと」

ユース災害ボランティア基金の取り組みには国も関心を示していて、協力していく方針です。

9月10日からは山形県での水害に対するボランティアが始まり2025年春にも能登半島地震の被災地に継続支援を行う予定です。

静岡県は南海トラフ地震が想定されています。基金では静岡からボランティアの輪を広げ、静岡が被災地になれば全国から支援を受けられるような学生同士のネットワークを築いていきたいということです。

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