東京・明治神宮外苑地区の再開発計画について、事業者が9日、伐採する樹木を124本減らすなどした見直し案を公表した。当初の計画は都心の貴重な緑の危機として、故坂本龍一さんら著名な文化人が異を唱えた。市民や専門家からは見直し案についても、問題点の指摘や注文が相次いだ。(森本智之)

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◆伐採本数を減らしたという「世論誘導狙いでは」

 「世論誘導の効果を狙っているのではないか」。米国人コンサルタントのロッシェル・カップ氏は、見直し案の実効性を疑問視した。伐採を減らしたとする124本のうち16本は移植への振り替え。移植は根や枝を切断し、樹木に大きなストレスを与える。国立競技場の建て替え(2019年完成)でも大規模な移植があり、生育不良が多く指摘された。「移植が保全になるかは分からない。問われているのは数ではなく、樹木の保全の質」と述べた。

◆「大規模な再開発をすること自体に無理がある」

 外苑の中心施設の聖徳記念絵画館前の芝生広場で、伐採を防ぐため施設配置を改めた点については、大方潤一郎・東京大名誉教授(都市計画)が「広場が狭くなり、景観がさらに劣化する」などと指摘した。「伐採を減らすため、他の所に無理が生じている。土地が限られた外苑で大規模な再開発をすること自体に無理があり、緑を犠牲にすることは避けられない」と批判。見直し内容の妥当性について「都の審議会などで丁寧に検証されるべきだ」と注文をつけた。

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◆生態系をどう保存するかの視点「見直しに欠けている」

 文化財保全の提言をし、見直し議論をリードしてきた日本イコモス国内委員会の石川幹子理事は「樹木は他の木や下草などと互いに関係しながら成長する。樹林地としての生態系をどう保存するかが重要。今回の見直しはこの視点に欠け、樹木の本数に終始している」とみる。

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◆住民「誰もが参加できる意見交換会を開いて」

 再開発を巡っては「批判への事業者側の対応や情報公開が不十分」とも指摘されてきた。日本イコモスは見直しの提言を2年以上続けているが、事業者側が対応せず「無視された状態」(イコモス)。住民説明会も参加対象を近隣に限り「決まったことを伝える通告会」と批判されている。  地元住民らでつくる市民団体「明治神宮外苑を子どもたちの未来につなぐ有志の会」の加藤なぎさ代表は「誰もが参加できる意見交換会を開き、計画を説明して批判にも答えてほしい」と求めた。「多くの専門家から具体的な意見が出ているのだから、事業者が回答すれば、計画の妥当性や実現可能性が私たちのような素人にも判断できる」 

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