シリーズ「被爆79年 NO MORE...」。

原爆投下後まもない広島・長崎で、被爆者のために家を建てたアメリカ人たちがいたー。

発起人となったフロイド・シュモーと、長崎での家づくりの責任者で、その後しばらく被爆者たちと暮らしたジェームズ・ウィルソン。

2人のアメリカ人にスポットを当て、家づくりに込めた思いや、そこに暮らした人の記憶、現代の私たちへのメッセージを伝えるシリーズの「後編」。

【前編のあらすじ】

原爆投下に心を痛め、広島・長崎で、被爆者のために家を建てたアメリカ人・フロイド・シュモー。

『これ(家を建てること)によって、私たちは、戦争は悪いこと、私たちが間違っていた、苦しんだ人たちに 申し訳ないと思っていると言いたいのです』 ※シュモーさんが文通相手に書いた手紙より

住宅建設には、国籍も、文化も、宗教も様々な若者たちが参加した。家づくりは、平和をつくることそのものだった。

長崎では、爆心地から600メートルの山里小学校そばに、1951~1960年にかけて、9軒の家や集会所が建てられ、戦争や原爆で夫を亡くした妻と その子どもたちが暮らした。

後編

「シュモーさんには足向けて寝られん!」

シュモー住宅は老朽化し、1977年、長崎市営シュモーアパートとして建て替えられた。

アパートの壁には、住人たちのたっての願いで、シュモーさんへの感謝の思いを刻んだプレートが設置されている。

シュモー住宅時代からの住人・馬場充夫さんは、胎内被爆者だ。

妊娠中だった母が入市被爆。長崎市茂里町の三菱製鋼で働いていた父は、被爆から3週間後に亡くなった。

長崎のシュモー住宅の住人・馬場 充夫 さん(78):「男か女かもわからんしね、私のこと。顔ぐらい見て死にたかったろうね、とは思うけどね」

1951年、馬場さん一家は、完成したシュモー住宅に入居。母、祖母、3人の兄と、6人で暮らした。台所に水道があり、それまで苦労していた水汲みの必要もなくなった。

馬場 充夫 さん(78):「そりゃあ、飯の次はそれ(住まい)だからね。親たちはやっぱり、シュモーさんが来るとなれば、お菓子買ってきたり。足向けて寝られんっていう気持ちじゃなかったかな」

「うちの子に悪い子はいません!」父親代わりのアメリカ人

シュモーアパート隣に建つ公民館。ここにかつて、住民たちが「クラブ」と呼んだ集会所があった。

その一室に住んだのが、長崎の建設責任者でもあったアメリカ人、「ジムさん」こと、ジェームズ・ウィルソンさんだ。

子どもたちにとっては父親代わり。馬場さんにとって忘れられないのは、住宅のよその子どもとケンカした時のこと。怒鳴り込んできた相手の父親に対してジムさんは・・・

馬場さん「(ジムさんが)大きな声で『うちの子にそんな悪い子はいません!』って。体張って守ってくれた。(その時の気持ちは)言葉では言えんかな」

しかし、ある日、ジムさんは、子どもたちの前から突然姿を消してしまった。

馬場さん「それっきり。消息がプッツリ切れて」

ジムさんが姿を消した真実ー

長崎外国語大学。創設者である青山武雄氏が戦後まもなく再建した国際的な青少年団体「長崎YMCA」が母体だ。

武雄氏の長男で、学院の元副理事長・青山 愷 さんは、中高生の頃、ジムさんと何度も会ったことがある。

ジムさんは、原爆投下から3年後、アメリカのYMCAが3年の期限で日本に若者を派遣したプログラムで来日し、長崎YMCAで英語を教えていた。

青山 愷 さん(91):「とっても明るい方で、誰とでもフランクに話せる方でした」

父が遺していたという資料の中に、ジムさんが突然姿を消した真実があったー。

ジムさんらが発行していた「平和新聞」。ジムさんは、長崎で「平和會」を結成し、平和運動をしていたのだ。

時は、朝鮮戦争のさなか。再軍備が進んでいた。

ジムさんは、「平和を守るには平和の方法を」と反対の声を挙げ続けたことで、「強制送還」となっていた。

青山 愷 さん:「アメリカの政府としては、GHQとしては、恐れていたでしょうね。アメリカ人がこういうことをやるということはですね」

平和新聞には、ジムさんからのメッセージも載せられていた。

『どうか戦争遂行努力に撲する無暴力抵抗と非協力に努めて下さい。これが大衆の最も強力な武器です。わたし達は世界をとりまくスクラムを組みましょう。それは戦争しようとしている各国政府も破る事は出来ないものです』

シュモー住宅時代からの住人・馬場 充夫 さん:「(ジムさんの)見方は変わらん。尊敬するような運動とかそういうことをされたからますます…とか、ちょっと非難されるようなことしていたとか聞いたとしても、私の中では変わらない」

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