長野県内有数のブドウの産地・中野市では、シャインマスカットなど人気の高級品種の出荷が始まっています。
農家にとってはうれしい収穫の季節ですが、一方で最も警戒するのが大切に育ててきた農作物の盗難です。
夜間のパトロールにも同行しました。


「きょうも元気よくオランチェ開店ですのでお願いします」
「いらっしゃいませー」

収穫の秋を迎えたJA中野市の農産物直売所「オランチェ」。

平日でも多くの買い物客が訪れ、店内は活気にあふれます。

農家が持ち込む採れたての野菜や果物が所狭しと並び、中でも1袋108円コーナーが人気です。

宮入キャスター:
「シメジが1袋108円。丸ナスが5個も入って108円。お買い得です」

買い物客:
「わざわざ新潟から来ました」
「新鮮な野菜が安いから。すごく魅力的です」

そして、今の時期の主役は。


宮入キャスター:
「ナガノパープル、シャインマスカット、クイーンルージュのブドウ3姉妹です」

中野市特産の、ブドウ。

人気の高級品種が直売所にも並び始めました。

買い物客:
「きょうはブドウを買いに来ました」
「ブドウはこの子もすごく食べるので、いっぱい買って、きょうのデザートにしようと思ってます」


JA中野市では、11日からシャインマスカット、16日の週からはクイーンルージュの露地物が、いよいよ出荷される予定で、今年の出来に自信をのぞかせます。



JA中野市園芸課課長・小林哲也(こばやしてつや)さん:
「粒も大きくてまた夏場も暑かったんですけども、日照時間も多くて適度にお湿りもあったので、おいしくてジューシーなブドウが出来上がってます」

宮入キャスター:
「高社山のふもとというような場所になるんですね?」
「はいそうです」
「うわー広いですね」

中野市のブドウ農家・田中章(たなかあきら)さんは120アールの畑でシャインマスカットを中心に栽培しています。

宮入キャスター:
「大粒ですね立派です」
田中さん:
「ここまで育てましたんで大事に大事に」
宮入キャスター:
「広い畑ですけどもひと房ひと房向き合っての作業?」
田中さん:
「そうですね」


1年間の苦労を乗り越えて、立派に育てたシャインマスカット。

収穫直前のいま、生産者が警戒するのは近年多発するブドウの盗難です。

田中さん:
「2~3年前になりますけども、収穫しようとしたら20房くらいがもうすでになくなっていたというような状況でした」
「ただはっきりと証拠があるわけでもなんでもないので、気づかなければそれも何もなかったことになりますんで」

こうした盗難被害では、証拠がないなどの理由で警察への届け出をあきらめる農家も多いといいます。

そこで田中さんは2023年、畑に防犯カメラを設置しました。

田中さん:
「不審者ですとかそういう情報がつかめればなと。あとはうちだけじゃなくて、ほかのところで被害に遭ったときに手掛かりになるようなことがあれば、情報提供できるなと思って」


防犯カメラは千曲市のエムケー精工の子会社・エイザックスが製造したもので、ソーラー発電で作動するため電源が必要ありません。

内蔵された人工知能=AIによって人物を識別し、不審者を検知すると、農家のスマートフォンにメールで通知。



さらに畑の様子を映像で確認することができます。

宮入キャスターと田中さん:
「私が映ってリアルタイムってことですか」
「そうですね」
「けっこうクリアですね」
「けっこう周りの状況とかもけっこうわかりますね」
「田中さんの操作でこれグルーっと見えるんですか?」
「見えますねはい」
「すごーい一周回っちゃいます?」
「ほぼ一周」
「へーじゃあ完全に田中さんの操作で監視することができるわけですね?」
「はいできます」


畑の様子をリアルタイムで確認できるこの仕組みは、スマート農業につながるとして、中野市では補助制度を設け、防犯カメラの導入を後押ししています。

農家からは、「被害がなくなった」などといった声も聞かれ、試験的に導入した2023年度の10台から今年度はおよそ60台に設置が増えています。

農家による盗難対策は、ほかにも。

小林さん:
「ブドウ畑を中心にパトロールをよろしくお願いしたいと思います」

農作物の収穫時期にあわせて中野市内で行われている夜のパトロール。


盗難防止を目的に、農家とJAなどが協力し、ブドウ畑を中心に見回ります。

7月下旬から始め、リンゴの収穫が最盛期を迎える11月まで行います。



生産者:
「丹精して一年手入れしてきたもの(盗むの)やめてよって話だよね」
「こっちは手間もお金もかけて作ってる話ですから、一生懸命みんな苦労して作ってきたものなので、とられるとやっぱりショックでかいし、台風とかならあきらめもつくけど、人に持っていかれたとなれば怒りしかないよねもう」

JA中野市によりますと、4年前の2020年に盗難被害が多発したことを受け、翌年からパトロールなどに取り組み、その成果は表れています。


2023年の被害は、2020年の5分の1以下にまで減りました。

生産者:
「減ったよって実際警察の方もそうおっしゃっていらっしゃったし」
「正直一日の仕事のあと疲れてっていう思いもあるけど、そりゃ頑張ろうじゃねえかいっていう感じですよね」

パトロールではブドウ農家・田中さんの畑も見回りました。

宮入キャスター:
「いま早速ライトがつきました。そしてサイレンが流れています」
「この映像は田中さんのところにメールで届くことになっています」

JA中野市ぶどう部会会長・下田貴之(しもだたかゆき)さん:
「警察の方、行政にも協力いただきまして地域一体となってここまで防犯パトロール継続して、生産者個々でも防犯対策しているところが、やっぱり被害額少なくなってる、そういう効果が出ていると思います」


そして、防犯カメラは今後、遠隔での畑の管理や野生鳥獣対策など、幅広く活用できる可能性があります。

JA中野市園芸課課長・小林哲也さん:
「クマであったりハクビシン」
「最近はやっぱり獣の被害も多くなってきてますので、そういうことも期待しながら様子を伺ってます」
「農産物盗難もしっかり農協としてカバーしながら、おいしく食べてもらえるように出荷をしていきたいと思ってますので、よろしくお願いします」

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