7月に投開票された東京都知事選のポスター掲示板を資材として再利用し、都立田園調布高校(大田区)の生徒らが文化祭の準備を進めている。都知事選では一部候補者や政治団体の選挙ポスターを巡って議論が起きた掲示板だが、生徒らは「ある物は有効利用しないともったいない。選挙に関心を持つきっかけにもなった」と話している。(佐藤航)

 東京都知事選の選挙ポスター問題 7月7日投開票の都知事選に過去最多の56人が立候補し、掲示板の枠が不足したほか、売名や営利目的とも取れる一部の選挙ポスターが批判を受けた。候補者の1人は、ほぼ全裸の女性の写真を使ったポスターを掲示。警視庁から都迷惑防止条例違反の疑いで警告を受け、撤去に追い込まれた。ある政治団体は大量に候補者を擁立してポスター掲示板を「占拠」し、団体に寄付した人の主張をポスターに掲載。掲示板の枠を販売するような行為に批判が集中した。

ポスター掲示板を塗りつぶす生徒たち

◆物価高騰、ベニヤ板の代わりに

 ブルーシートに大きな板を置き、黒ペンキで丁寧に塗りつぶしていく生徒ら。板はマス目で仕切られ、「ポスター掲示場」「東京都知事選挙」の文字が見える。ところどころ候補者のポスターも張られたままで、「人の顔にペンキを塗っちゃっていいのかな」という冗談も聞こえてきた。  田園調布高は毎年9月の文化祭「ぽろにあ祭」で、各クラスが模擬店やアトラクションなどを展開。例年はクラスごとに割り振られる2万~3万円ほどの生徒会費でベニヤ板などを買っていたが、最近の物価高騰でやりくりが難しくなっていた。そこで目をつけたのが、ポスター掲示板だった。  発案したのは3年の吉川智也さん(17)。知り合いの教員から別の学校で掲示板を活用した例があると聞き、大田区選挙管理委員会事務局に問い合わせた。営利目的ではなく、候補者の顔が分からないようポスターを塗りつぶすなどの使い方であれば、提供は可能だという。学校と相談しながら区選管事務局と交渉し、大きさ1畳ほどの掲示板216枚を譲り受けた。

ポスター掲示板を使ったアトラクションについて説明する吉川智也さん=東京都大田区の都立田園調布高校で(佐藤航撮影)

◆大がかりなアトラクションの材料に

 掲示板は希望するクラスに配布。これまで予算の半分以上を占めていたベニヤ板の購入費を他に回せるようになり、吉川さんは「できることの幅が広がった」。掲示板は木ではなく強化段ボールで作られ、軽くて簡単に曲げられる。吉川さんのクラスは掲示板をフル活用し、迷路のようなコースをトロッコで巡る大がかりなアトラクションを準備している。  「選挙に関心を持つきっかけになった」と話すのは、文化祭実行委員長の村瀬大翼(だいすけ)さん(18)。ポスターが張られた掲示板が学校に運び込まれたとき、独特な主張をする候補者が多かったことなど、自然と都知事選の話題になったという。  吉川さんはポスター掲示板を巡るトラブルについては「いろんな主張をする団体があったけど…」とあきれた様子で、「再利用は悪いことではない。来年も大事に使いたい」と話した。  ぽろにあ祭は13日午前10時~午後3時、14日午前9時~午後2時半に大田区田園調布南の同校で開かれる。

ポスター掲示板を使って文化祭の大道具を作る生徒たち



鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。