気になるマチの中の“ある音”を調査です。
依頼者 こあらさん(50) 札幌市在住
「地下鉄 東西線のホームで『チュンチュン』という音が聞こえます。何の音なのか?そして、なぜ南北線では聞こえないのか、調べてください」
札幌市の地下鉄は、南北線、東西線、東豊線の3路線です。
依頼者によると東西線では音が聞こえるが、南北線では音が聞こえないといいます。
いったい何の音なのでしょうか?まさかスズメでも飼っているというのでしょうか?
さっそく東西線の二十四軒駅に行ってみると…。
調査員
「聞こえました!聞こえました!今チュンチュンという音がなっています」
実際にホームで確認すると、電車が近づく時と、去った後にチュンチュンという機械音が響きます。
この音の正体とは?
地下鉄利用者
「知りません。聞いたことない」
「入ってくるとき?ごめんなさい、わからない」
「こういう音じゃなくて?地下鉄の何かではなくて?」
やはり利用者も音には気づいているが、詳しくわからないようです。
続いて南北線では…。
調査員
「南北線のホームではチュンチュン音が聞こえません」
依頼者のいう通り、南北線ではチュンチュン音を確認できませんでした。
では東豊線はどうなのでしょうか?
調査員
「東豊線でも、チュンチュン音が鳴っています」
結果、東西線と東豊線では、チュンチュン音が聞こえ、南北線では聞こえませんでした。
これは一体どういうことなのでしょうか?札幌市交通局に取材を依頼すると…。
取材許可が下りました。
とある実験を見せてくれるということで、さっそく東豊線の車両基地に行ってみると…。
札幌市交通局 原聖矢さん
「チュンチュンという音を出します」
調査員から遠く離れた場所に立ち、案内軌条いわゆる地下鉄のレールをハンマーで叩くというのです。
すると…。
札幌市交通局原 聖矢さん
「いきます」
確かに!東西線や東豊線で聞こえてくるチュンチュン音です!
これは一体どういうことなのでしょうか?
音の秘密が車両の下にあるということで、今回は特別に見せてもらえることに。
札幌市交通局 原聖矢さん
「こちらが『負集電器』(ふしゅうでんき)」
この装置こそがチュンチュン音の正体、「負集電器」なのです。
一般的な地下鉄では、鉄製の車輪からレールに電気を流していますが、札幌市の地下鉄はゴムタイヤを使っているため電気は流れません。
そのため「負集電器」を通してレールに電気を流しているのです。
では、なぜチュンチュンという音が鳴っているのでしょうか?
札幌市交通局 原聖矢さん
「チュンチュン音は、負集電器がレール(案内軌条)の継ぎ目やカーブ時に、一度離れ再度接触するときに、チュンチュンという音が聞こえる」
つまり、この負集電器がレールのつなぎ目やカーブで一度離れ、再び接触するときに「カンカン」と鳴るのです。
さらに、その音が地下空間で反響しチュンチュンと聞こえるのだといいます。
では、なぜ南北線では聞こえなかったのでしょうか?
南北線の車両基地で話を聞きました。
調査員
「なぜ南北線はチュンチュン音が鳴らない?」
札幌市交通局 牧野海斗さん
「音は鳴っている。南北線は負集電器の構造が、東西線や東豊線と異なります」
なんと、南北線でもチュンチュン音は鳴っているのです!
その秘密は、やはり負集電器にあるといいます。
札幌市交通局 牧野海斗さん
「こちらが負集電器。レールの継ぎ目などで一回跳ね上がり、落ちたときに案内軌条(レール)の上面に当たる」
そうなんです。東西線や東豊線が横から接触するのに対して、南北線は上から接触するタイプの負集電器なのです。
そのため…。
札幌市交通局 牧野海斗さん
「側面と上面では音の響き方が違うため、チュンチュン音がしにくい」
そこで再び実験!今度はレールの側面と上面をハンマーで叩き、音の違いを聞いてみました。
まずは横から。続いて上から。
確かにチュンチュン音は鳴っているが、音が小さい!
横から叩くのと比べて上から叩いた方が音が響きにくいのです。
そのため南北線では音に気づかなかったというわけです。
では、なぜ南北線と東西線・東豊線では、負集電器の形が違うのでしょうか?
札幌市交通局 牧野海斗さん
「案内軌条(レール)の形が東西線・東豊線と南北線では異なる」
その答えは、レールの形状にありました。
南北線のレールは、Hを横にした形なのに対して、東西線・東豊線は、Tを逆にした形のレールなのです。
実は、東西線の工事をするに当たり、横から接触する負集電器に変えると、車両のスペースが広くなるということで、この方式が採用されたのだといいます。
それに伴って、レールの形も変更されました。
札幌市交通局 牧野海斗さん
「案内軌条(レール)の形により、音の響き方も変化しているのかもしれません」
これが「チュンチュン音」の正体でした。
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