国内では岡山で初めてスタートした取り組み「コミュニティフリッジ」をご存じでしょうか。「困ったときはお互いさま」の精神を第一に全国的に広がりを見せている活動を取材しました。

24時間利用が可能な「みんなのれいぞうこ」

岡山県玉野市宇野。駐車場の奥にある建物。掲げられているのは「みんなのれいぞうこ」と書かれた看板です。ここは、24時間・365日の利用が可能で、専用のアプリでカギを開けて中に入ることができます。

建物の中には米やレトルト食品、缶詰、日用品などが並んでいました。ただ店舗とは異なり、商品に値段の表記はなくレジや人の姿ももちろんありません。みんなの冷蔵庫とは一体何なのか。

(四ツ葉会 みんなのれいぞうこ プロジェクトリーダー 吉田秀樹さん)
「事前に登録をしていただく必要はあるんですけど、無料でご利用になれます。児童扶養手当とか、就学援助とか主に母子家庭の方が利用されているケースが多いです」

利用できるのは児童扶養手当を受給する家庭など支援を必要としている人々で、登録をすれば気軽にいつでも利用できるのがみんなの冷蔵庫なのです。そもそもこの取り組みは「コミュニティフリッジ」=「公共の冷蔵庫」と呼ばれ、ヨーロッパで始まりました。実は日本で初めて導入されたのは岡山県で2020年、新型コロナで収入が減った世帯などを支援しようと岡山市内に誕生しました。この動きを広げようと社会福祉法人「四ツ葉会」では「みんなのれいぞうこ」と名付けた施設を2年前、倉敷市大高に今年5月には玉野市に開設しました。

(四ツ葉会 みんなのれいぞうこ プロジェクトリーダー 吉田秀樹さん)
「制度が行き届いていない方について、そういうサービスをやっていこうということで始めています。時間を制約するほうが管理的にも運営的にもスムーズに出来たりするんですが、中には仕事を深夜にされている方もいらっしゃいますので、人に会わなくて、より使いやすいようにということで、24時間365日ということにしております」

少しずつ企業による支援の輪も

この冷蔵庫を支えるのは地域の企業や個人です。在庫や備蓄品、お中元まで寄付された様々な食材や日用品が並んでいます。中には、家庭菜園で作った野菜を持ってくる人も。玉野市では、SDGsの一環として高校生が運営の一部も手伝ってるといいます。支援の輪は年々大きくなっていて、岡山市で学生服などを手掛ける「トンボ」はこの6月、体操服150着を寄付をしました。

(トンボ 恵谷栄一常務取締役)
「(寄付をしたのが)入学式が終わった後で、少し多めに作っていた在庫品があるということの中で体操服を提供させていただいたと。子どもたちが喜んでくれるということを思って、協賛させていただいたと」

今回、紹介したコミュニティフリッジ=公共冷蔵庫は児童扶養手当や就学援助を受給されている人が対象で、企業や個人から寄付された品はデータベースで管理されているといいます。利用者はアプリに商品のデータを入力すればいつでも無料で商品を受け取ることができるんです。そもそもなぜ、無人での利用が可能なシステムをとっているかというと、支援を受ける側が気兼ねなく利用できる点を大切にしているからだといいます。

貧困が社会問題となるなか支援を受けることを躊躇し社会的に孤立してしまうケースも問題となっていて、コミュニティフリッジは隠れた貧困に手を差し伸べることができると注目されているんです。

だれかと顔をあわせることなく「罪悪感が減る」

現在、みんなのれいぞうこは宇野と大高を合わせて181家庭が登録しているといいます。生活に困窮している人の中には「人に会って物をもらうこと自体に抵抗感がある」と感じる人も少なくありません。誰かと顔をあわさなくても利用できる「みんなのれいぞうこ」は生活の大きな支えになっているといいます。

「みんなのれいぞうこ大高」を利用しているシングルマザーの女性が取材に協力してくれました。この日、選んだのは、日用品やヨーグルトゼリーなどです。

「Q「ここはよく使われるの?」
(利用者)
「よく、週に2回ぐらい。助かってます。子どもが4人いるのですごい喜びます。子どもが」

顔を合わせなくても、利用者からは感謝の言葉が綴られています。

「心から感謝してます。子どもを頑張って育てれます」

(利用者)
「毎日のことなんでね、食べるのって、本当に・・・。そんなに人には言えないですけど、(みんなのれいぞうこを)使っているとかは。子どもたちは、我慢がちょっと減るっていうか、こっちは罪悪感が減るって感じがします。助かってます。みんなで分けて食べています」

(四ツ葉会 みんなのれいぞうこ プロジェクトリーダー 吉田秀樹さん)
「実際なかなか難しいところではあるんですが、本当に必要な方に、どれだけ商品を届けていくかというところが、一番、今後の課題になっていくかなというのを思っています」

声を上げられず社会の片隅に埋もれてしまった貧困に少しでも手を差し伸べることができるように。全国の街角に、少しずつみんなのれいぞうこが増えています。

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