福岡県立大学で勤務する55歳の男性職員が、長時間労働を強いられた結果自殺したなどとして、遺族が賠償を求めていた裁判。大学が解決金5800万円を支払うことなどで和解しました。

県職員だった男性は、県から大学に派遣され、人員不足でやり方の分かる職員がいない業務を、たったひとりで担っていました。和解には、労務管理の改善も盛り込まれています。

亡くなる1年前、県庁から大学に派遣された

福岡県庁から派遣

訴状によりますと2015年3月、福岡県立大学で勤務していた当時55歳の男性職員が自殺し、その後、労災にあたる公務災害と認定されました。

県の職員だった男性は亡くなる約1年前の2014年4月から県庁から大学に派遣され、学務課の職員として勤務を開始しました。

ミスの許されない業務 分かる職員おらずたったひとりで

福岡県立大学

しかし、必要とされる人員が不足し、周囲に担当業務がわかる職員がいない中で、苦戦しながら様々な業務にあたっていました。

2015年の年明けからは、センター試験などの大学入試や卒業論文のとりまとめなど、ミスの許されない重圧のかかる業務を責任者として同時並行的に1人でこなしていたということです。

100時間超える時間外労働 うつ病に

亡くなる直前の時間外労働は月に100時間を超え、男性はひどく疲れた様子などを見せるようになり2015年の2月中旬ごろにうつ病を発症。

男性の遺書「誰も助けてくれない」

遺書には「やることが多すぎる。休みに出てきても追いつかない。やり方もわからない。この職場は山のように人に仕事を押しつけて誰も助けてくれない。子ども達へお母さんを大事にして支えてやってくれ」などと書き残されていたということです。

遺書全文(訴状より原文まま)

怨んで死んでいく。とてもつらい、仕事が、やることが大過ぎる。やり方も解らない。この職場は山のように人に仕事を押しつけて、何なんだ。誰も、助けてくれない。誰もやり方を知らない。仕事がありすぎて、どんどん遅れてどうしようもない。日々仕事が、だんだん貯まって行く、どうしようもなくなっている。ひょっとすれば、既にどうにもならなくなっているかも

誰も気づいてくれない。休みに出てきても、追いつかない。やることが、多すぎる。この先また、仕事が増えていく。この職場は、何なんだ。やることが多すぎて、使い走りみたいなことをやらされて、忙しすぎて見直す余裕もない時間に作った物のミスを、責められ、やじられて、もう我慢ができない。あいつらと同じ空気を吸うのもいやだ。こんな仕事が自分に偏りすぎた職場は、いやだ。

子ども達へ、お母さんを大事にして、支えてやってくれ。それだけだ。

大学・福岡県と和解 労務管理の改善も盛り込む

遺族は2021年に必要な人員配置など労働環境を整備する義務を怠ったなどとして、県と大学に約8800万円の賠償を求める訴えを起こしていましたが、8月9日、和解が成立したということです。裁判の調書によりますと和解条項には大学が解決金5800万円を支払うことに加え、労務管理の改善や再発防止の誓約などが盛り込まれています。

悩みを抱える人の相談窓口

厚生労働省は、悩みの相談先としてSNSを含めた複数の相談窓口を紹介しています。

#いのちSOS(特定非営利活動法人自殺対策支援センターライフリンク)
電話:0120-061-338

よりそいホットライン(一般社団法人社会的包摂サポートセンター)
電話:0120-279-338

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