能登半島地震から9月1日で8か月。日常が取り戻せない中「まだ夢の中にいる」と気持ちの整理がついていない被災者もいて、一筋縄にはいかない復興の現状があります。被災地の今を追いました。

元日の地震で震度5強から7の激しい揺れが襲った石川県。特に輪島市は、建物被害も人的被害も最も大きかった場所です。

知人の手を借りて被災した自宅の片付けをしているのは、小川昭子さんと夫の選太郎さんです。

<和田啓記者>
「一人ではなかなか」

<小川選太郎さん(83)>
「そうですね」
<小川昭子さん(83)>
「本当に助かりました。近くの電気屋さん、いっぱいだって言われて」

<和田啓記者>
「タンスがもう前のめりになって」
<小川選太郎さん(83)>
「ここへ来る自体がとてもじゃないが足の踏み場もない状態」
<和田啓記者>
「もうこれ以上開かないですね」

小川さんの自宅は大規模半壊。基礎が壊れているため、建物全体が歪んでしまい住むことはできません。

「あった?あった?あったって」「あー出せた、あーよかった」

2月に取材したとき、昭子さんは家族と一緒に大切な着物を家の中から取り出していました。

<小川昭子さん(83)>
「これ私の若い時の。家紋。みんな紋入れてこしらえていた」

家族の人生の節目を彩ってきた着物ですが、被災後「置いておくところがないから」と多くを処分しました。

<小川昭子さん(83)>
「私のものは要らん。もったいないけど。なくすっていうのは寂しいですけど…」

門前町で生まれ、門前町で育った昭子さん。毎日、仮設住宅から元の自宅に戻って来てしまうと言います。

<小川昭子さん(83)>
「仮設におっても、人のとこにおるみたい。落ち着かん」
Q.この8か月はどんな8か月でしたか?
「8か月は…夢の中におるんやね、まだ。見れば現実なんだけど何となく自分の気持ちでは割り切れないこともあるしね。どんだけ生かされるか分からんけど、がんばらなね」

同じ場所に新たな家を建てる計画ですが、通りのほぼすべての家が解体予定のため街の景色が変わると言います。

<小川選太郎さん(83)>
「2年後そのまま草原になっとるか…がほとんどだと思います」

「それいけ!それいけ!」

<輪島市に住む 中浦拓翔さん>
Q.きょうという日を迎えてどうでしょう?
「正直、めちゃくちゃ楽しいですね。1月1日の震災があってからずっと非日常が続いていて、そこからこのお祭りが初めて日常になったんじゃないかなと思っていて」

輪島が一体となり熱気に包まれる輪島大祭です。規模を縮小しましたが、2024年も開催されました。夜になると「キリコ」と呼ばれる巨大な灯ろうに明かりが灯ります。

<地元の親子>
「楽しい!キリコ見れるの」
「いまは地震のあとなんで、みんなで楽しんでいこうじゃないけど、気持ち一つにしてこうみたいな気持ちがします」

この8か月で、輪島市内には2700戸以上の仮設住宅が建ちました。建設予定の9割以上が完成しました。

<仮設住宅の入居者>
「(自宅は)全壊で、今ここに住んでいます」
Q.家族は何人暮らし?
「7人家族なので2つ部屋いただいて住んでいます。仮設住宅ばっかり建っているし、見える景色も全然違う。でも祭り遣れてるだけ良いかなと思って。輪島の人たちまつり好きなので、この音聞くとみんな元気になれるのかなと思って。私も聞けてなんか楽しいです」

復興を願う人々の思いが止まったままの時間を動かす原動力です。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。