現行の健康保険証の廃止まであと3カ月となった今もなお、新たな制度を誤解している人たちがいる。全国の地方紙18紙が合同で実施したアンケートからは、そんな現状が浮かんだ。(デジタル編集部・福岡範行)

現行の健康保険証とマイナンバーカード

1万2007人の回答者の1割は、現行の保険証が12月2日で使えなくなると勘違いしていた。保険証の代わりになる「資格確認書」の存在を知らない人も目立つ。 マイナ保険証が基本となる新制度への理解が追いついていない人たちからは「このままでは置いていかれるかも」と不安の声が聞こえた。

◆病院の声かけ、チラシが誤解招く

アンケートに回答した東京都北区の50代女性も、マイナ保険証がないと病院にかかれなくなると勘違いしていた一人だ。 6月に病院で「マイナカードを次回お持ちください」と促され、「12月2日から現行の健康保険証は発行されなくなります」と書かれたチラシを渡されたからだという。 「悩んでいるうちに置いていかれるのでは」。そんな不安から、マイナ保険証の利用登録をしなければと思ったが、どこで何をすればいいのか分からず、いまだに登録できていない。 現行保険証が使えなくなっても、マイナ保険証を登録していない人には資格確認書が交付されることを伝えると、「私も、夫も知りませんでした」。 アンケートでも、回答者の3割ほどは資格確認書の存在を知らなかった。

厚生労働省が用意した病院などでの配布用のチラシ㊧やリーフレット㊨。リーフレットは2024年7月時点のもので「資格確認書」の説明もあるが、以前から配られていたチラシには説明がなかった

◆トラブルの対処法も広がらず

マイナ保険証の情報を読み取るカードリーダーに不具合があった場合の対処法についても、周知が広がっていない状況だ。40代女性からは「停電時や機械が故障した場合、医療費は全額負担になるのか」という疑問が寄せられた。 「認知症になれば更新手続きが難しくなるのでは?」(70代女性) 「将来高齢になり自ら更新できなくなった場合、どうすればよいか知りたい」(70代男性) 「紛失したときはどうすればいいの」(60代男性) これらは、2年前に政府がマイナ保険証一本化の方針を表明した当時から懸念されていた問題だ。

病院に設置されたマイナ保険証の読み取り機=名古屋市で、2023年7月撮影(一部画像処理)

厚生労働省や総務省は対応マニュアルを作成しているが、十分に浸透しているとは言い難い。

◆半数近くが「理解できていない」

マイナ保険証に関する制度の理解度を尋ねると、「全く理解できていない」と答えた人が約1割いた。「あまり理解できていない」も4割ほどに上った。 周知不足を指摘する人たちの意見に交じって、60代男性がこんな疑問を書いていた。「なぜ、急ぐ必要があるのですか?」   ◇ マイナ保険証の合同アンケートには、多くの疑問や不安の声が届きました。東京新聞では今後、皆様からいただいた声をもとに、Q&A形式の解説や検証記事などを公開していきます。マイナンバー問題の記事一覧ページに掲載します。

マイナ保険証の合同アンケート 東京新聞「ニュースあなた発」など読者とつながる報道に取り組む全国の18紙が8月9~18日に通信アプリLINE(ライン)などで呼びかけ、1万2007人から回答があった。多様な声を聞き取るのが目的で、無作為抽出の世論調査とは異なる。
回答者のうちマイナカードを持っている人は64.4%(全国では、7月末時点で74.5%)、保険証として使っている人は26.3%、今後使う予定の人は15.6%だった。

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