日向灘で発生した地震では、「南海トラフ地震臨時情報」の巨大地震注意が初めて出され、災害への備えを見直すきっかけにした人も多いのでは。

災害が起きたとき、子どもだけでも命が守れるように。山口県防府市の小学生が、企画から運営まで行う「子ども防災キャンプ」に挑戦しました。悪戦苦闘しながらも、楽しみながら防災を学ぶ姿がありました。

子どもリーダー(4年)
「私はマッチを使うことに賛成です。実際に本物のマッチを使うことで火の怖さを知り、本当に災害があったときに役立つと思うからです」

6月、災害に遭ったとき何が必要か、松崎小学校の児童が話し合ってきたことを発表しました。この報告会は、夏休みに控えた「防災キャンプ」に向けたものです。「防災キャンプ」では実際に避難所で過ごしながら、防災について学んだり体験したりします。防府市の「國衙地区」で7年前から行われていましたが、今回は対象を松崎小学校の校区に広げました。

企画から運営まで担う「子どもリーダー」

今回の防災キャンプは、企画から運営まで子どもたちが行います。「子どもリーダー」として取り組むのは、4年と5年の7人です。

子どもリーダー(5年)
「非常食は作ったほうがいいと思います。だって夜ごはんがないので」

本番1か月前、キャンプで何をするかを話し合いました。

全体リーダー 守重佑梨さん
「絶対やったほうがいいと思うもので意見とか説明が出来る人はいますか」

会議を仕切るのは、全体リーダーで5年の守重佑梨さん。守重さんは地区の防災キャンプに2年生の時から参加しています。災害時に大人がいるとは限らないと気がついた守重さん。子どもだけでも行動できるようにと、「こども防災キャンプ」を提案しました。

守重さん
「とにかく楽しくみんなが防災意識を高められるような防災キャンプが出来たらいいなって思います」

能登半島地震経験した子どもも

「自分が引っ張って行きたい」と4年生でリーダーを務める福田柚季さん。1月の能登半島地震では、富山県の親戚の家で震度5強を経験しています。

4年生リーダー 福田柚季さん
「急に襲われたものだから恐怖と怖さと不安しかなくて、恐ろしかったです。いつでも気を引き締めて、今この瞬間に地震が起こると思ってほしいです」

子どもたちを見守るのは、防災士らで作る会の宮本博史会長です。防府市を中心に、10年前から防災の普及活動を行っています。

防府市防災士等連絡協議会 宮本博史会長
「次の世代に申し送るというか指導していくことが大事で、リーダーという役割があれば教えるために事前の勉強、教えてくださいということにつながりますので、そこを期待しています」

小学生13人が防災知識を学ぶ

8月10日、防災キャンプが始まりました。

受付係の子ども
「体温は正常です」

受付も、子どもたちが行います。

守重さん
「かなり緊張して、ちゃんとこれまでやってきたことが全部やりとげられるか正直心配ですけど、自分ができるだけ精いっぱい頑張りたいと思います」

場所は避難所に指定されている松崎公民館です。キャンプには松崎小学校の13人が参加しました。まずはワークショップ。3つの班に分かれて、新聞スリッパやペットボトルランタン作り、ハザードマップの確認を行いました。

子どもリーダー
「ここの縦線に沿って三角に折りたたみます」

新聞紙1枚で作ることができる新聞スリッパは、災害時に履くものがないときに、足元を守ります。新聞紙を重ねることで、厚みを増すこともできます。

参加者
「普通のより落ちる心配もないから楽ちんです、これ。けっこう簡単だったのでこれからも家で新聞とってもらって作っていきたいです」

ペットボトルで作るランタンは、水を入れることで光を拡散させて、広い範囲を照らします。色を塗って、オリジナルのランタンを作りました。

夕食の準備に悪戦苦闘

ワークショップのあとは夕食の準備です。メニューはカレーライス。買い出し班とお米を炊く班を決めないといけませんが・・・。

参加者
「買い出し行きたい!」

買い出し班が人気のようです。リーダーたちが話し合って、無事に班を決めることが出来ました。

お米は釜で炊きます。マッチでの火起こしに挑戦しました。

参加者
「いけいけいけ」

まきに燃え移る前に火が消えてしまいます。

宮本会長
「燃えるものの近くにおらんとだめ。離れていたら風が吹いて消えるでしょ」

隣から、火だねをもらうこともできますが、宮本さんは自力で火をつけることにこだわりました。

宮本会長
「人の手を借りずに自分でやる。そのことが自分の命を守ることにつながるので、できるだけそのことを欲しかったという気持ちです」

何度も挑戦し、火を起こすことに成功しました。

参加者
「達成感があって、しかも仲間と、友達とつけられたのですごくうれしかったです」

カレーは油がないことを想定して、野菜を水から煮込みました。

子どもリーダー
「合掌、いただきます」

参加者
「おこげがこうばしい、めっちゃおいしい」

別の参加者
「ちょっと水の分量間違えたからスープみたいになってるんですけど、おいしいです」

食後も車椅子の押し方を勉強したり、手作りの地震体験器で震度5強を体験したりと、盛りだくさんです。

夜の危険場所を知る

参加者
「火の用心」

午後8時。自分たちで作ったペットボトルランタンを手に、夜回りをしながら危険な場所を確認します。

宮本会長
「この用水路が全部埋まりました。全部あふれました」

この用水路は去年の大雨で、裏山から大量の土が流れ込みました。夜は視界が悪く、用水路に落ちるなどの危険性が高まります。昼間との違いを知ることができるのも、キャンプならではです。

2日目はハザードマップ作りから始まりました。身近な場所を知ることも、大切なテーマのひとつです。災害が想定される場所や、避難所を地図に書き込みます。実際のハザードマップと照らし合わせ、身近にある危険な場所や避難所などを再確認しました。

参加者
「松崎地区には安全な場所と危険な場所があることがわかりました」

段ボールを切る最後のワークショップは、段ボールトイレづくりです。段ボールを重ねて穴を開け、簡易トイレを作りました。断水した時やトイレが足りないときなど役に立ちます。

参加者(リーダー)
「においとかもれないように、ふたとかで閉められるように思いつきました。100点!」

穴の形を工夫したり、飾りをつけたり。子どもならではの発想で、トイレが完成しました。

防災意識を子どもから家庭、地域へ

昼食を食べて、2日間にわたる防災キャンプは終了。宮本会長から修了証書が手渡されました。

福田さん
「いろいろトラブルもあったけどみんなで乗り切れたことが一番うれしいです」

守重さん
「災害時はひとつ間違えれば命を落とすことがあると思うのでよりたくさんの人の命がつなげられたらいいなと思います」

宮本会長
「子どもたちが悪戦苦闘もしながら、かなり防災意識は高まってきたのではないかなと。今後も子どもたちの意見をとりいれながら、発想が拡大できるような講座にしていきたいと、再度確認させていただきました」

子どもたちの力で作り上げた「子ども防災キャンプ」。楽しみながら身につけた防災意識は、子どもから家庭へ、そして地域へと広がっていきます。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。