16歳未満の少女を誘拐し性的暴行を加えたとして起訴された米空軍兵、ブレノン・ワシントン被告の第3回公判が30日、那覇地裁で開かれた。ワシントン被告は、「彼女は18歳と答えた」などと述べ、同意の上での行為だったと主張した。
裁判を振り返る
裁判では嘉手納基地所属の兵長ブレノン・ワシントン被告が、去年12月、16歳未満の少女に声をかけて車で連れ去った後、基地の外にある自宅にわいせつ目的で連れ込み性的暴行を加えたとしてわいせつ誘拐と不同意性交等の罪に問われている。
第3回公判では被告人質問が行われ、ワシントン被告は少女の年齢について「彼女は18歳と答えた」と述べ、16歳未満とは認識していなかったことを主張した。そのうえで、性的行為について「同意を得ていた」とも主張した。
一方、前回第2回公判では、被害少女がワシントン被告に対し、両手でのジェスチャーを交えながら日本語と英語で実年齢を伝え、また暴行された際には拒否する意思を伝えたと法廷で証言している。
ワシントン被告が語ったこと
30日の法廷では、休憩もはさみながら4時間あまり、検察官と弁護人双方からワシントン被告への質問が行われ、裁判官からもいくつか直接質問が飛んだ。この裁判でとりわけ焦点となっているのは、16歳未満という少女の年齢だ。同意の有無に関わらず「不同意性交等」の罪が成立する要件となるからだ。
「少女は18歳と答えた」
被告人質問ではワシントン被告が少女の年齢をどのように認識していたのか、聞き方を変えながら質問が重ねられた。
弁護人 「年齢を聞いた後、彼女は何と答えた?」
被告 「18歳だと答えた」「I believe her(彼女を信用した)」
検察官 「彼女が〇歳(実際の年齢)と知っていたら、それを信じて家に連れて行かなかった?
被告 「もし〇歳といっていたら、もちろんその場を離れていた」
裁判官 「何歳と答えたらどうする、とかじゃなく単なる質問として聞いた?」
被告 「はい」
こう答えるワシントン被告の様子を見て弁護人は頷いた。
一方、前回第2回の公判では少女への証人尋問が行われ、年齢について次のように証言している。
【第2回公判でのやり取り】
検察官 「(年齢について)どう答えた?」
少女 「〇歳(16歳未満)ですと答えた。」
検察官 「日本語だけで?」
少女 「英語でも」「分かるようにジェスチャーで答えた」
少女は両手も使って実際の年齢を示したと話していて、30日の法廷でのワシントン被告の証言は、少女の記憶と大きく食い違う。
「罪として扱われるとは思ってもいなかった」
【第3回公判】
弁護人 「性的な思いを持ち始めたのはいつ?」
被告 「そのような気持ちは、キスを始めたあとに」「公園で見た時、彼女はbeautifulだと思ったけど、その時は性的な思いは抱いていなかった」
プライバシー保護のため表現を控えるが、法廷では当時起こったことについて詳細な動作の確認が進んだ。ワシントン被告は、少女に対し徐々に性的な行為に及んでいく際、拒否されていないという趣旨の証言を一貫して続けた。
そして、罪として扱われるとは思ってもいなかったと語った。
弁護人 「警察がきて刑事事件だと言われ、なんて思った?」
被告 「I was very surprised, confused.」
弁護人からの質問の最後で語られたのは、現状への失望だった。
弁護人 「あなたの現状は?周りでおこったことは」
被告 「全て失った、家、車、時計、自由も」
「I lost everything I have.」
「“kid napper and rapist”と社会から見られている」
もともと基地の外に住んでいたワシントン被告は、嘉手納基地から出られず監視下に置かれた状態にも不満を示した。
被告 「僕と同じ年齢に見えた」「もし〇歳(少女の実年齢)に見えていたらその場を去っていた」「I have no interest in younger women.<若い女性に興味はない>」
公判の終盤こう語ったワシントン被告は当時24歳。一方少女は当時、学校指定のジャージ・体操着を着用していたことが確認されている。
公判の終盤になるとワシントン被告は、自ら署名した調書に基づく検察官からの質問に、「(署名した)状況は覚えているけど、検察が完全に私の言いたいことを完全に理解していたとは思えない。(自宅に連れ込んだことに)性的な目的はなかった」などと答えた。
具体的な行為についても、取り調べ時には話していたとされる行動を「覚えていない」と話す場面が目立った。
第3回公判を傍聴した人
「自分のやったことの罪の意識がこれっぽちも感じられない。(前回公判で)少女の発言も聞いているはずなのに、この子の痛み、悲しみも何も伝わってないんだな、って」
「言ってることが全部矛盾だらけで、都合の悪いことは“わかりません”“覚えてません”と自分の弁護だけに走るから、ひどいなって」
「被害女性と言っていることが違うし、詳細な内容も気持ち悪い」
「そもそも隠蔽していたこととか、今同じことが起こっても女性の権利が守れない、大事なことを守れないこと」「日本とアメリカとの関係において同じことが起こったときに(女性を)守れないことが、本当におかしいことだと思う」
次回の法廷は10月25日に開かれ、論告求刑などが予定されている。(取材 愛久澤力也・神里晏朱)
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