台風10号は、9月1日にかけて西日本を東へ進む見込みです。台風本体から離れた東日本でも、台風周辺や太平洋高気圧の縁を回る暖かく湿った空気が流れ込んでいるため、太平洋側の地域を中心に、断続的に雷を伴った非常に激しい雨が降っている所があります。
台風はこの後、9月1日には熱帯低気圧へと変わる予想となっていますが、SNSなどでは「熱帯低気圧ではなく、温帯低気圧では?」という投稿も多く見られました。熱帯低気圧と温帯低気圧は何が違うのでしょうか?

まず始めに台風の状況です。

31日00時の実況
【種別】 台風
【存在地域】 三好市付近
【進行方向、速さ】 東南東 10 km/h (6 kt)
【中心気圧】 996 hPa
【最大風速】 18 m/s (35 kt)
【最大瞬間風速】 25 m/s (50 kt)

31日12時の予報
【種別】 台風
【存在地域】 田辺市付近
【進行方向、速さ】 東 15 km/h (7 kt)
【中心気圧】 996 hPa
【最大風速】 18 m/s (35 kt)
【最大瞬間風速】 25 m/s (50 kt)

01日00時の予報
【種別】 台風
【存在地域】 尾鷲市付近
【進行方向、速さ】 東 ゆっくり
【中心気圧】 996 hPa
【最大風速】 18 m/s (35 kt)
【最大瞬間風速】 25 m/s (50 kt)

01日21時の予報
【種別】 熱帯低気圧
【存在地域】 三重県
【進行方向、速さ】 ほとんど停滞
【中心気圧】 998 hPa

気象台によりますと、台風10号は今後「熱帯低気圧」へ変わる予想となっています。なぜ温帯低気圧ではなく、熱帯低気圧なのでしょうか?

まず、台風と熱帯低気圧の違いについてです。

気圧の高低や低気圧の大きさで決まると思いがちですが、実は中心付近の風速の違いだけなんです。
最大風速が17.2メートル以上が台風で、17.2メートルに満たなければ熱帯低気圧と呼びます。
台風10号は、午後3時時点の最大風速は18メートルですので、「台風」となっています。

また、今回は「温帯低気圧」ではなく「熱帯低気圧」へ変わると予想されています。なぜなのでしょうか?

こちらも熱帯エリアにある低気圧が「熱帯低気圧」で温帯エリアにある低気圧が「温帯低気圧」思いがちですが、実はこの2つ、低気圧の構造によって区別されているんです。

まず「温帯低気圧」とは、通常のニュースなどでも見聞きする低気圧のことで、日本付近にある低気圧のほとんどがこの「温帯低気圧」です。

北半球では赤道付近が暖かく、北極付近が寒いですが、南の暖気と北の寒気との温度差によってできるのがこの温帯低気圧です。温帯低気圧は暖気と寒気で構成されているんです。

一方、熱帯低気圧は暖気と寒気の温度差ではなく、海上の強い日差しで発生します。
海水が温められ大量の水蒸気が発生、上昇気流ができて渦が作られ、雲ができます。熱帯低気圧は暖気のみで構成されているんです。
なお温帯低気圧は前線を持つことがありますが、熱帯低気圧は前線はありません。

今回は、熱帯低気圧の構造、つまり暖かい空気で構成される形が保たれる予想となっているのです。

ただ、今後は台風が陸上を進むため、熱帯低気圧へと変化するタイミングが早まる可能性もあります。

また温帯低気圧に変化した場合は、かえって雨の範囲が拡大し、影響も広がる可能性もありますので注意が必要です。

石川博康 気象予報士

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