中小企業のM&Aをめぐり、悪質な買い手企業によるトラブルが相次いでいる問題で、国がガイドラインを改定し、仲介会社が悪質な企業についての情報を売り手に開示することを新たに義務づけました。

全国で300万社を超える中小企業。その半数以上が今、高齢化と後継者不足に直面しています。

金砂郷食品 永田由紀夫 社長
「この会社を地元には残したいが、自分の家族とかではなく、力がある会社と一緒になって事業経営を行うことが一番平和裏で、一番いい道筋だと思った」

後継者不足に悩む茨城県の納豆業者「金砂郷食品」。大手の仲介会社に紹介された投資会社「ルシアンホールディングス」にM&Aで事業を引き継ぎました。

しかし、ルシアン社側は経営をほとんど行わず、口座からおよそ3500万円を送金させて抜き取り、借入金の連帯保証も引き取ることなく姿を消しました。

給与の支払いの遅れや税金の未納という事態も起きました。

金砂郷食品 永田由紀夫 社長
「約束と全然違うし、やっていることもいい加減。お金のことも含めて、許されることではない。非常に憤慨した」

ルシアン社は、他にもおよそ2年間で37社を買収。同じような行為を重ねていました。

行方をくらましていたルシアン社の幹部を記者が直撃すると…

ルシアン社幹部
「(Q.ルシアン社の件についてうかがいたい)急いでいるから。(Q.企業買収のことについてうかがいたい)…」

中小企業庁はきょう、悪質な企業を排除するための対策を公表しました。

齋藤健 経済産業大臣
「仲介者・フィナンシャルアドバイザーに対し、M&Aに伴うトラブルに関する適切な対応を求め、悪質な買い手企業の排除を図っている」

ポイントになったのが、売り手と買い手の間に入っている仲介企業です。

中小企業庁は、M&Aのガイドラインを改定。仲介企業が買い手企業のコンプライアンスなどに関する調査を行い、売り手企業にも説明を行うよう新たに義務づけました。

金砂郷食品の社長は、大手の仲介会社が間に入っていたので信用してしまったと話します。

金砂郷食品 永田由紀夫 社長
「仲介企業はきちんとしたフィルターを通して紹介していただきたい」

この他にも、仲介会社は売り手と買い手の両方から手数料を受け取っているため、買い手企業を優遇するなど利益相反行為を行ってはならないとしています。

ガイドラインに違反した場合は、国のM&A支援機関の登録を取り消され、社名を公表される可能性があります。

現在、中小企業庁は、仲介企業が悪質な買い手だと知った上で売り手に紹介した疑いのあるケースについて調査を行っています。

金砂郷食品 永田由紀夫 社長
「M&Aはその会社にとって一大行事、まさに生きる死ぬの話もある。より一層クライアントに寄り添う体制にしたほうが、今後のためになる」

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