石川県輪島市中心部にあるショッピングセンター「ワイプラザ輪島」の衣料品売り場が29日、能登半島地震から約8カ月ぶりに営業を再開した。順次再開したスーパーマーケットやホームセンターを含め、これで地震前の陣容に戻る。さらに空きスペースに自力再建が難しい地元商店を誘致して「輪(わ)っしょい市場」を整備する計画も。支配人を務める浄琳坊(じょうりんぼう)隆さん(53)は「輪島のみんなの力を、ここに結集したい」と復興の中核になる決意だ。(奥田哲平)

営業を再開する衣料品売り場で、今後の構想について語るワイプラザ輪島の支配人、浄琳坊隆さん=石川県輪島市で

◆震災直後は手書きで値札、従業員3分の2が出勤できず

 奥能登最大級のショッピングセンターは、主に食料品を扱うスーパーとホームセンター、100円ショップ「ダイソー」などで構成。元日の地震で天井の板が落ちたり、商品の棚が倒れたりする被害があった。衣料品は4000万円分の商品を処分せざるを得なくなった。浄琳坊さんは「今年から元日を休業日にしたので人的被害が出なかった」と振り返る。  1月4日から入り口付近だけで食料などを被災者に販売。停電でレジが使えないため、手書きで値札を付けた。約140人の従業員は無事だったが、3分の2が出勤できなかった。「この先どうなるのか」と撤退も頭をよぎった浄琳坊さん。ワイプラザを運営する「ヤスサキ」(福井市)の取締役が3月上旬、全従業員に「全ての部門を復活させる」と宣言したことで本格的な復旧が始まった。

◆支配人自身も仮設暮らし「少しでも前に進んでいる姿を」

 ダイソーが入る別館は無事で、建物の修繕を終えたスーパーは4月、ホームセンターは8月に再開。最後に残った衣料品売り場は場所を移して再開にこぎつけた。「少しでも早く肌着や冷感敷きパッドなどの夏物を提供したかったが、オープンできない歯がゆさがあった」と浄琳坊さん。店頭には秋物の洋服が並び、来客を待つ。  地元商店を誘致する「輪っしょい市場」は、衣料品売り場の移転で空いた区画に設ける。7月から「出張輪島朝市」が常設されており、市場と一体化して盛り上げる狙い。自らも輪島市門前町の仮設住宅で生活する浄琳坊さんは「仮設暮らしのストレスがある住民もいるので、衣食住以外の『遊』の部分として漫画喫茶やカラオケがあってもいい」と思い描き、「復興が進んでいないという人がいるが、少しでも前に進んでいる姿を見せたい」と話している。 

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